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情けは人を殺す tntn ページ39

何から逃げてる?どうして私はこんなに怯えているの?


頭の中でそんな声が反響する。誰の悲鳴か分からないものが、背後で聞こえた。強い鉄の匂い。嫌でも察するその匂いは、あたり一帯の雰囲気を変えていた。




いつも通りの日時の筈だった。いつも通り授業を受けて、みんなとご飯を食べて、部活をやって、帰って。そんな日時を送る筈だったのに。



「トントン君がナイフを持って暴れてるって!!先生も刺されたみたいだし、早く逃げた方がいいよ!!」



そんな一声に、生徒たちは一斉に走り出していた。トントン君がそんな事をする子じゃないというのは当然わかりきっていた。でも否定出来なかった。


トントン君は俗に言う虐めの被害者だった。スクールカーストの高い位置に属している生徒たちによく絡まれていたのを見かけた。
カツアゲは勿論、万引きをさせられたという話も聞いた。



私にとっての普通の日常は、トントン君にとっては苦痛の日常だったのだろう。我慢の限界が出来なくなって、トントン君は__




「Aさん」


「ひっ…」


背後で聞こえたか細い声。それが誰のモノなのかなんて、考えないでも直ぐに理解出来た。


「ト、トントン君…」


生気のない顔。いろんな人の血が付着したナイフと制服は真っ赤に染まっていた。


「他の子は逃げたけど、Aさんは逃げへんの?」


トントン君の後ろで倒れている人。それが何を示しているか、分かってるはずなのに。


「あ…えっと……」


言葉が出てこなかった。恐怖からか、ガタガタと体が震える。見たことのないトントン君の表情に気圧されて、私は俯いて泣き出してしまった。


違う、辛いのはトントン君のはずなのに。どうして私が泣いてるの。



「Aさんは、みんなの前では助けてくれへんかったけど、二人きりの時はよう心配してくれたよな」


予想外の言葉に、私は思わず顔を上げた。
先程とは違う、少しだけ悲しそうな表情だった。


「俺、すごい嬉しかったわ。そういう風に接してくれた人、Aさんしかおらんかったから。だからこそ、こういう風になって、悲しいわ…」


「トントン君…」


「もう俺はここに戻ってくる事はないだろうから、一言言わせて欲しい」


そう言ってゆっくり近付くトントン君に、恐怖は一切なかった。ナイフの存在も忘れていた。







「好きだったで、A」






優しく抱き締められたその温もりは、二度と忘れる事が出来なかった。

頑張る貴方へ ???→←快楽へと導かれる zm



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できるニート(プロフ) - 真由さん» ホントですか!そのコメントだけでも励みになります!更新頑張ります (2020年12月25日 12時) (レス) id: ffbcb8a332 (このIDを非表示/違反報告)
真由(プロフ) - 初コメ失礼します...!最新話が鬼っほど大好きです...解釈一致が凄いです...ありがとうございます...!!! (2020年12月25日 11時) (レス) id: 045f50c8f8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:できるニート | 作成日時:2019年9月1日 14時

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