ONLY LOVE ５【ARS】 (ページ31)

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side.Kiuchi

俊くんがひまわり園を旅立って二週間。
今日は月に一度の翔くんの定期検診の日だ。

『あれから変わりありませんか？』

『はい。本人も最近は体調も良いみたいで、今日も元気に走り回ってました』

『そうですか。私も早く会いたいな』

ははっと笑う加藤先生は私とそう歳は変わらないように見える。きっと若くして実力を認められた先生なのだろう。

翔くんは先生からのお願いでまだ診察室には入って居らず、小児科で預かってもらっている。

いつもなら私と一緒に診察室に入るから不思議に思って看護師さんに聞くと私に話があるらしい。

『それでお話というのは…』

『あーそんなに緊張なさらないで下さい。決して悪い話ではありませんから』

恐る恐る話題を変えた私に苦笑いしながら首を振った先生はパソコンに向き合っていた体を私の方に向ける。

向けられた顔に少しホッとした私は、自然と自分自身か硬くなっていた事に気付いた。

『翔くんが木内さんの元へ来た経緯は以前聞きました。そして、さっきお話になられた木内さんの違和感を教えて頂きたくて…』

『何か関係あるんですか？』

『その可能性も考えてお願いしています』

先生のハッキリとした口調に頷く。

私が翔くんに感じた最初の違和感は同じ年頃の子供より大人びているように見えた事だった。

初めて病院で言葉を交わした時、お母さんが傍に居ないと知っても騒ぎ出す事はなかった。

普通、小学生になる前の子供はお母さんが居ないと知ったらパニックになって暴れ出すものだ。

そして何処か大人びていると感じる時もあれば、俊くんの別れの時のように私が心配になる程に大きく取り乱す。

『あの時はただ寂しがっているだけと思っていました。ですが今冷静になって考えると少し違うような気がするんです』

『私も木内さんと同じです。恐らく翔くんはお母さんが居なくなってしまったことを自分のせいだと思っている。そして俊くんに対しては、また捨てられる、そう思ったのでしょう』

先生の見解は私と全く同じものだった。

それを聞くとどうしても翔くんを救ってあげられなかった自分が悔しくて情けなくて堪らない。

でもそれよりも気になる事がある。

『あの、それが病気に関係あるというのは？』

『以前お話したと思いますが翔くんの病気はストレスも感じやすいんです。そして、そのストレスが原因になる事もあるんです』

先生の言葉がズシッと私の肩にのしかかった。