ONLY LOVE ５【ARS】 (ページ30)

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side.Kiuchi

『僕と俊くんの部屋をずっとこのままにして？』と言った翔くんの願いを無下には出来ない。

それは私に対する最初の願いだった事と同じ事を俊くんにも言われたからだった。

旅立つ前日、金森先生が俊くんを食事部屋から連れ出した後、一旦翔くんを落ち着かせて俊くんの元へ向かった。

扉を開ければ俊くんは翔くんよりかは格段に落ち着いて座っていた。

私の顔を見るなり『翔くん、大丈夫だった？』と心配そうに聞いてきたが、ニコッと頷けばホットしたように笑った。

『ねぇ真央』

『うん？どうした？』

いつもは真央せんせでしょ？って突っ込む所も何故かその日は何も言えなかった。

それぐらい俊くんの目が私をしっかりと見つめていたから。

『僕がここから出てっても、ずっと僕と翔くんだけの部屋にして』

『どうして？俊くんが居ないお部屋は翔くんが一人になっちゃうよ？』

俊くんらしいと思った。
でもそれと同時に違和感もあった。

『僕はずっと翔くんと一緒なんだ。きっとね、また会える気がするんだ。だから、それまでは真央せんせが僕の代わりに翔くんの隣に居てあげて』

俊くんは私が知らない間にビックリするぐらいカッコイイ男になっていた。きっと私よりも多くの時間を過ごしたから、誰よりも翔くんの事が分かるんだね。

そんな俊くんと翔くんの気持ちを私は絶対、簡単に否定したりしないから。

『施設長、お願いします。翔くんの様子は私が毎晩確認にいきます。ですからどうかあの部屋は二人だけの思い出にして欲しいんです』

施設長に頭を下げて頼み込んだ。

長くお世話になっているだけあって、施設長は私の様子に怪訝そうな顔をしたが何とか了承を得ることが出来た。

お昼ご飯の後、皆んなとお絵描きしていた翔くんに駆け寄って行って報告する。

『翔くん、これからもずっと俊くんと一緒に居れるよ。ずっとずっと一緒だよ』

『ほんと？』

もちろん、と頷けば嬉しそうに笑う。何故か嬉しそうに笑う翔くんを見ると私まで幸せな気持ちになる。

それが親の気持ちというものなのかもしれない。

それから翔くんは俊くんの居ない毎日を積み重ねていた。ひまわり園では優しいお兄ちゃんもお姉ちゃんも居るから、翔くんはまたいつも通り笑うようになった。

でも俊くんだけに見せるあの笑顔は暫く見れていない。きっとアレを引き出せるのは俊くんだけなんだね。

すごいなぁ。私も翔くんにあの笑顔を見せて貰えるように頑張んなきゃな。