ONLY LOVE ５【ARS】 (ページ27)

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side.Kiuchi

生まれたばかりの赤ちゃんや事情により一人で寝ることが難しい子には誰かが付くようにしていたが、それ以外の子供達には自立する事の大切さを伝える為に二人部屋で過ごすようにしていた。

翔くんが来るまでは俊くんは人数の理由で二人部屋にする事が出来なかった。

『翔くん、俊くん。一緒のお部屋楽しい？』

『うん！楽しいよ！ね？翔くん』

ブランコに乗り大きな声で私の質問に返して来た俊くんは隣に居る翔くんをちらっと見る。

そんな俊くんに翔くんは優しく微笑んで頷く。

『ね！翔くんも楽しいってさ』

『そうだね。二人を一緒にして良かった』

ブランコから降りた俊くんの頭を撫でると、俊くんは自慢げに笑って決めポーズをする。

そう、年齢は俊くんの方が下だが、二人の間では確実に俊くんが翔くんを引っ張っていた。本当に仲もよく一日の殆どを二人は一緒に過ごしていた。

そして、翔くんが来てから一ヶ月。
大きな変化があった。

夜ご飯の時間で子供達がざっと部屋に入って来て、各々の席に着く。もちろんこの日も俊くんと翔くんは隣同士の席に座っていた。

その日のメイン料理は肉じゃが。

金森さんが全体を見てくれているから、私はいつも通り翔くんの横に付いて食事のサポートをしていた。

『ん？どうかした？』

肉じゃがを見た途端、翔くんの顔が綻んだ。いつもと違うその態度に声を掛けずにはいられなかった。

『翔くん、肉じゃが好きなの？』

小さく頷いて嬉しそうに笑う翔くんの姿に俊くんは私の方を見て大きく頷く。

その意図を汲んで、いつも通り箸で小さくカットしたじゃがいも翔くんの口元まで持っていくとパクッと食べてくれた。

いつものような迷いや恐れは感じられなくて、思わずその頬を撫でた。

でも、それ以上に驚いたのはこの後だった。

『…お、いしぃ』

小さな声で、でも笑ってそう言ったのだ。

もう俊くんは口が半開きだし、他の子供達も一斉に翔くんを見つめる。

『そっか。翔くん美味しい？』

『ぅん…真央せんせ』

その言葉を聞いたらもう思い切り抱き締めていた。

他の子供達もざっと寄ってきて皆んなで翔くんを囲んで笑った。

『翔くん、肉じゃが美味しいね』
『お声、出たね』

これだけ興奮するのも分かる。子供達は翔くんの声を聞いたのは初めてで、そう言う私も初めて会ったあの日以来、翔くんの声を聞いていなかったのだ。