140 幾年の月日を。 ページ25
side.N
「はぁーぁ、あニノも起きたんだ」
リビングで大野さんが入れてくれた珈琲を飲み翔ちゃんと喋って、一度部屋に戻ろうと階段を上がればちょうど自室から出てくる相葉さんと鉢合わせした。
「とっくに起きてましたよ。てかあんた欠伸してんじゃないすか」
「だってまだ眠いしさぁ」
「それは俺もだっての。昨日あんたが潤くんに起きなさいよって言ったのに」
「あー松潤もう起きてんの？」
「いや、まだだから起こしに行こうかと思ってる所です」
ふーん、と首を振りながら階段を降っていく相葉氏を見ながら自室に入り、置きっぱなしにしていた携帯を持ち隣の部屋をノックする。
「松本さーん。そろそろ起きた方がいいと思うんだけど。ねぇ、まつもっさーん」
帰ってこない返事に冗談混じりの大きな声で名前を呼ぶとドン、という音が聞こえてくる。
その音に半ば嫌な予感を感じながらもその扉を開けると、じっと俺を見つめる二つの目。
「何で睨んでんのよ」
「それはお前が朝っぱらから大声でドアを叩いたからに決まってんだろ？てかそれ以外あるか？」
「それはごめんごめん。それより、そろそろ行きますよ？」
案の定、お怒りの潤くんを何とか宥めて潤くんを部屋から引っ張り出す。
下を覗けば翔ちゃんと大野さんが楽しそうに話してて、その視線の先にはソファーで完全に寝ている相葉氏が居た。
「また寝てんのかよ、相葉氏」
俺のこのツッコミに潤くんの返しはなかった。ずっと下を見つめていて。いや、翔ちゃんと大野さんを見つめて目を離さない。
「潤くん、潤くん？」
「ん？あ、ごめんごめん」
何度か名前を呼ぶとハッとした様子で我に返る。
「テンション上がったんじゃない？雅紀も。だから寝れなかったんだよ」
「へぇ、潤くんはテンション上がったの？」
「っ…そうじゃねぇけど」
頭を掻きながら少しむしゃくしゃしたのか「ごめん」とまた謝罪の言葉を口にする。
「潤くんらしくない、とは言わないけど。あんまり気にしすぎるとバレますよ」
「へ？」
「潤くんの考えてる事ぐらい分かりますよ」
だからこそ、俺のこの演技も潤くんにとっては混乱を招いただけだろう。
翔ちゃんと大野さんを見つめるあの目は完全に俺が出会った頃の潤くんの目だった。
翔ちゃんに恋をしていたあの目と大野さんには敵わないと泣いた目と同じだった。
「何年一緒に居ると思ってるんですか」
「和…」
だから、翔ちゃんの考えだって俺には分かる。
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作者名：未翔
| 作成日時：2020年3月8日 20時
