past.41 ページ46
side.O
「潤くんってば、本当に顔の割に人見知りにも程があるでしょ」
軽く言い放ったそいつは二宮和也と名乗った。
「潤くんと同じクラスで相葉さんとは幼なじみです。翔ちゃんとは今日初めてお会いしました」
何故か俺は二宮くんに対してこの一言で心が見透かされるような感覚に陥った。
まぁ隠してることも何もないんだけど、何と言うか嘘を付けないというか勘がいいというか。
「よろしく。俺は大野智。今年高校を卒業して今は大学で美術を専攻してる。翔くんとは見てのとおり一緒に暮らしてる」
松本くんは相当驚いたようで完全に固まってる。
一方の二宮くんはこれまた反対に冷静に俺の言葉の続きを待っている。
そんな空気感を察した雅紀が口を開く。
「大ちゃんと翔ちゃんは付き合ってるんだ。ホントに仲良しカップルだもんね、風間ぽん？」
話を振られた風間くんはあからさまに茫然としてて、翔くんは苦笑いってとこだな。
でも俺は例え空回りしたとしても場の空気をよくしようと自ら動く、そんな雅紀が好きだ。
「あぁ、翔くんは俺のだから。取るんじゃねぇぞ、二人とも」
雅紀の作り出した空気にはみ出さぬように柔らかく冗談めかしてそう言えば、「はいっ！」と返事が返ってきた。
でも俺はこの時、松本くんの葛藤に気付いてあげることが出来なかったんだ。
「さっ、ずっと立ってるのもなんだし座ろうよ」
翔くんが気を遣ってお茶を入れたり何だかんだと忙しなく動く。
マスターの料理をつまみながら簡単な自己紹介から始まり、気付けば俺は雅紀と出会った時にタイムスリップしたかのようになっていた。
「へぇ、ニノかぁ。可愛い顔してんなぁ」
「おじさんがそんな事言ったら翔ちゃんかわいそー」
「翔ちゃんは優しいけど、さすがになぁ大ちゃん。浮気はよくないよ、浮気は」
すっかり、おじさんと呼ばれる程に俺もフランクに話すことを受け入れている。
「でも大野先輩もモテる顔だと思います」
「さすがは松潤、俺もそれはずっと思ってます」
風間くんと松潤の翔くん寄りの硬い組。
何か面白いメンバーだな。
ふと翔くんを見れば同じく俺を見ていた彼と視線が重なり合う。
"いいメンバーじゃん"
"智くんもその一人でしょ？"
"ありがとう"
何てのは彼の目を見てれば分かる。
ニノ、松潤。
まさかこの二人とこれから一緒に暮らす事になろうとはこの時の俺は思いもしなかった。
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作者名：未翔
| 作成日時：2019年9月1日 14時
