90 変化した想い。 ページ23
side.O
翔くんを抱えるようにして彼の部屋に入り、そのままベッドに横たわせる。
何も言わずに痛みに耐えるように目を瞑り、顔を覆う。
その症状からして貧血であることが安易に分かる。
薬を飲もうにも今は飲めそうにもなさそうだから、少しでも痛みが和らぐようにそっと頭を撫でる。
暫く撫で続けていると翔くんの手がか弱い力でやんわりと俺を探す。
その手を捕まえて翔くんの名前を呼べば、しっかりと目が合う。
「マシになった？」
「うん…心配掛けちゃったね。ごめん」
「いいの。でも俺は翔くんがそんな顔してんのは好きじゃないからさ、謝んないでよ」
ぽん、と肩を叩けば「ありがとう」と優しい笑みを浮かべる。
落ち着いてきたようだし、薬を取りに行こうと立ち上がればグッと手を引っ張られる。
寂しいと訴えるような瞳でじっと見つめる。
だが、それも直ぐに逸らされる。
翔くんの口が開いて謝罪の言葉が飛び出る前に翔くんの横に腰を下ろす。
「今日は？どうだった？」
「えっと、潤がさ、真央先生の所に連れてってくれて。久しぶりにあの場所に行った」
戸惑いながらも、話し始めた翔くんはいつもよりスッキリとした顔をしている。
「ちゃんと真央先生に今までのこと報告出来た？」
「うん。俺、潤の前なのに泣いちゃってさ。みっともないって少しは思ってるはずなのに、嬉しかったんだ」
照れたように笑う彼はあの時よりずっと大きくなったと思う。
「じゃあ松潤に俺からも感謝しとかなきゃな」
「何で智くんが？」
「そりゃ、翔くんの恋人だかんな」
もう、と頬を膨らませているはずなのにその顔は赤く染っている。
いい加減、薬も飲ませたいし風間くんが来てるなら翔くんも喜ぶだろうから会わせてやりたい。
「翔くん、もうクラクラしない？」
「うん、もうすっかり」
「じゃ、そろそろ降りる？薬も飲ませたいし、今日はお客さんも来てるからさ」
さっき風間くんの前は通って来たけど、あの様子じゃ覚えてないだろうな。
「え？お客さん？」
誰か誰かとソワソワ気味の翔くんと一階に降りる。
途中でクラっとしたりすると怖いから、しっかり手を握る。
階段を降りた先に居た風間くんに俺が言うより早く気付いた翔くんは俺の手を引っ張るようにして彼の元へ足を進める。
「え？風間くん？来てたの？」
「久しぶり。翔くん」
心配そうに、それでも温かい笑顔を向ける風間くんがいる。
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作者名：未翔
| 作成日時：2019年9月1日 14時
