86 親友との再会。 ページ19
side.A
朝練を終えて講義を二時間受けて帰る。
4回生ともなればもっと忙しくなるものだと思っていた。
去年はあの翔ちゃんでさえも殆どの時間を勉強に費やさねばならない程だった。
それに比べて俺は、将来が決まっているとはいえ何ともまったりした生活を送っている。
まぁ頭の方は翔ちゃんのレベルになんぞ到底及ぶはずもなく、唯一の武器がバスケ。
ニノや松潤は「それが職になるのなら凄い事だ」と言うが何とも言えないな。
今日は翔ちゃんと松潤は出掛けてるし、ニノは午後からバイト。
大ちゃんは、まぁ家に居るだろうな。
大ちゃんと二人なら昼ご飯でも買って帰ろうかと最寄りの駅を降りて歩いていると、懐かしい顔を見つけた。
俺が気付いたのと同じ様に相手も俺を見て、ヨッと手を上げる。
「久しぶりじゃん、風間ぽん」
「ほんと久しぶりだね。全然変わってないじゃん」
「風間ぽんこそ。元気にしてた？」
「あぁ」
電話やメールもお互い卒業してからは何となく減ってしまっていた。
それでも、あの頃と変わらない親友の姿を見たら俺も不思議とあの頃に戻ることが出来た。
そこから暫く立ち話をしていたが「この後、暇なら家に来いよ」といつもの調子で誘い、頷いた風間ぽんとスーパーに寄り、そのまま二人で帰る。
「ただいまー」
「お邪魔しまーす」
風間ぽんを中に入れて、扉を閉めればスタスタと聞こえる足音。
「あっ、大ちゃん。ただいま、たまたま風間ぽんと会ってさ、だからそのまま連れてき」
「風間くん、久しぶりだね」
大ちゃんは俺には見向きもせずに一直線に風間ぽんに向かって来る。
いつもとは違う大ちゃんに俺は完全にちんぷんかんぷん状態で。
それ以上に困った顔をしてるのは風間ぽんだけど。
「お久しぶりです、大野先輩。あの時はご連絡が遅くなってしまい申し訳ありませんでした」
それでも直ぐにそういう事が言えるのは風間ぽんの凄いところ。
それには今度は大ちゃんがビックリして。
でも直ぐに思いきり風間ぽんを抱きしめる。
「大変だったろ？一人で。何もかも任せちまって悪かったな。翔くんに言えなくても俺にでも言ってくれれば……」
「すいません。でも大野先輩は翔くんのことで」
そう言う風間ぽんの言葉を遮るかのように大ちゃんは首を振る。
そして体を離すといつものふにゃりとした笑顔を見せた。
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作者名：未翔
| 作成日時：2019年9月1日 14時
