ONLY LOVE 2【ARS】 (ページ47)

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75 一緒に居る訳。ページ47

side.M

雅紀のように夢や勇気を与えられる力もない。

和のように上手く寄り添って安心させてあげることもままならない。

大野さんには言うまでもなく俺が持ってる力では及ばない。

「雅紀の夢は追いかけるべきもの。でも、俺のはそうじゃないんだよ。俺の我儘はもういいんだよ」

「なんで､そんなこと……」

悲しそうな目を向ける雅紀に目を背ける。

「俺だって、何か役に立ちたいんだよ！雅紀はいつだって前向いてて翔さんにとっても大切な人なんだから、俺の気持ちなんか分かるわけねぇだろ！！」

ただ投げ付けるかのように言葉をぶつけた。

何を言ったのか自分でも思い出せないぐらい、心も頭も一杯だったのかもしれない。

でも、そんな自分自身を庇うような想いは目の前で涙を流す雅紀を見たらすぐに消えた。

「いつだって…前向いてるか、俺そう見えてたのなら強くなったってことかな？」

わざとこの場を明るくする様に話すその姿に胸が押し潰されそうになる。

「でも、松潤だって翔ちゃんにとって大切な人だよ」

それだけを言うと俺に背を向けるようにキッチンに消える。

ガタン、という音がして彼が必死に涙をこれ以上流すまいと堪えているのが分かる。

リビングには雅紀が鼻を啜る音が静かなリビングに響く。

「松潤、大丈夫か？」

ふと肩に手を置かれ優しい声が聞こえる。

「おお、のさん」

俺を見る目はいつもと変わらない。

雅紀にあんなに酷いことを言った俺にそんな優しい目を向けないでくれ。

「分かってんだろ？後悔してるだろ？」

俺がゆっくりと頷けば「それで充分だよ」と俺の頭を掻き回す。

大野さんは決して俺に怒ることはしなくて、こんなに醜い心をも溶かしてしまう。

「松潤は強くなったなぁ。心配掛けてごめんな」

あのお金は誰から振り込まれているものなのか、そう聞こうとして辞めた。

今はそれより大切なことがある。

「大野さん。雅紀のとこ行ってあげて。俺も後でちゃんと謝るから。だから今は」

「分かってるよ。俺に任しとけ」

その力強い目になりたくて。

大野さんのように強くなりたくて、翔さんを守りたくて。

途切れ途切れに聞こえてくる二人の会話。

「ここには五人も居るんだから。何とかなるから。雅紀は雅紀らしく居てよ」

本当に大野さんの言う通りだ。