71 写真に写る人。 ページ43
side.N
翔ちゃんはここのところ殆どの時間を相葉さんに渡すアルバム作りに割いている。
今日は潤くんがバイト行ってるから俺が料理担当で普段より少し早く帰ってきた。
翔ちゃんは印刷仕立ての写真を机の上にこれでもかと並べる。
「いっぱい撮ってるね、翔ちゃん」
高校の頃から試合は必ず見に行っていたし、バスケの写真だけでも凄い量だ。
「ねぇニノ、これ見てよ」
翔ちゃんが指さしているのは相葉さんがドアップで写っている写真。
そしてその隣には潤くんが綺麗にカメラ目線を決めて笑っている写真。
「この写真が隣だと潤くんのキメキメショットも負けますね」
「潤の顔の濃さに適わないのは雅紀ぐらいしかいないね」
相葉さんのその写真を手に取って笑う。
机に並べられた写真は相葉さんだけではなく大野さんの居眠りを盗撮したであろうもの、
潤くんが相葉さんと腕相撲しているもの、
俺がゲームをしてて全くカメラを向いていないものまで沢山ある。
でも、翔ちゃんが写っている写真は極わずかだ。
「翔ちゃん、こっち向いて」
写真を懐かしむように眺める彼に声を掛ける。
少し驚いた顔でこちらを見ると、その瞬間を逃さぬようにシャッターを切る。
「あっ、にのぉ。俺、今絶対変な顔してたから…」
俺の携帯を取ろうと手を伸ばすけど、その前にちゃっかり保存ボタンを押す。
「これで翔ちゃんの写真もとーれた。ちゃんとアルバムに入れて下さいよ」
頬を膨らます翔ちゃんを横目にキッチンに戻る。
たくさんの写真とにらめっこをする翔ちゃんは稀に見るおもしろ顔だ。
あの写真の中に俺たちが多く写っていた理由。
それは間違いなく翔ちゃんが俺たちばかりを撮っていたから。
翔ちゃんが写っている写真は殆ど俺か相葉さんが撮ったもの。
大野さんは相変わらず機械音痴だから、殆ど写真を撮ることはないし。
潤くんがカメラを向けても翔ちゃん自身は恥ずかしいからとあまり写真を進んでは撮らせない。
だから今のようにふとした瞬間を狙う俺か、なりふり構わず撮る相葉さんが撮ったものばかりなのだ。
貴方は俺たちの笑った顔が好きだと言った。
それが翔ちゃん自身の幸せとも。
だから俺たちの写真ばかりを撮ったと貴方は言うだろう。
でも、俺も翔ちゃんが笑っている姿が大好きで、そんな姿を残したいとシャッターを切るんだ。
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作者名：未翔
| 作成日時：2019年7月10日 21時
