past.21 ページ42
side.A
「やっば、濡れちゃったし」
「ほら相葉ちゃん、これで拭きな」
突然の雨で屋上で食べるはずの昼ご飯も慌てて教室に戻ってきた。
大ちゃんが渡してくれたタオルで濡れてしまった肩を拭く。
翔ちゃんや風間ぽんも濡れてしまっただろうと二人を見る。
風間ぽんは上から下までびしょ濡れで、それに反する様に翔ちゃんは全く濡れていなかった。
「風間ぽん 取り敢えず拭きなよ。それじゃ風邪引くから」
昼ご飯よりも何よりも濡れてしまった身体に大ちゃんが渡してくれたタオルをそのまま掛ける。
その風間ぽんのすぐ横に居る翔ちゃんはさっきからずっと下を見つめている。
そんな翔ちゃんの姿に気付いた風間ぽんが咄嗟に大ちゃんの腕を引っ張る。
いきなり引っ張られた大ちゃんは驚きながらもその勢いのまま翔ちゃんに抱きつくような形になった。
「どうしたの？風間ぽん？」
俺としては疑問しかなかったが、その疑問もすぐに消えた。
「…翔くん？翔くん、どうしたの？ねぇ翔く」
普段 物静かな大ちゃんからは考えられない驚きの声が出る。
一瞬、大ちゃんの背中から見えた翔ちゃんはふるふると首を横に振ってなんでもないと嘆く。
しかし、その顔は明らかに強ばっており呼吸も乱れている。
「しょ……櫻井先輩！」
俺が翔ちゃんに駆け寄ると同時に風間ぽんが翔ちゃんにぴったりと張り付く。
そして翔ちゃんの背中を擦りながら「ゆっくりだよ。大丈夫だからね」と声を掛ける。
俺も大ちゃんもそんな風間ぽんを真似るようにして必死に声を掛け続けた。
違和感に気付いた周りのクラスメイトが養護教諭を呼びに走り、すぐに先生が教室に来た。
先生が来た時には既に呼吸も落ち着いており、俺が翔ちゃんをおぶって保健室に向かう。
先生は翔ちゃんをベット寝かせて、俺たちを遮るようにカーテンを閉める。
「いきなりか。びっくりしたわね。今は落ち着いてるし心配ないわ」
暫くしてカーテンの隙間から先生が顔を出す。
その一言に俺も風間ぽんも大ちゃんもホッとしたように胸を撫で下ろす。
「びっくりしたよ〜翔ちゃん。もう本当になんともないの？」
「うん、お陰様で。心配掛けてごめん」
はにかんだ翔ちゃんは俺たちを見て頷いた。
でも、俺たちはこの時に気付くべきだった。
風間ぽんの俊敏な動きに、
翔ちゃんのはにかんだ笑顔に。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 348人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：未翔
| 作成日時：2019年7月10日 21時
