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side.A
「相葉 どうかしたか？全然 集中出来てないじゃないか」
「いえ、なんでもありません」
コーチの言葉に咄嗟にそう返したものの、なんでもない なんて言うのは真っ赤な嘘だ。
何にもなしに集中していないし、シュートも入らないなんてバスケ部員としてはつきたくない嘘だ。
でも、目の前で翔ちゃんと大ちゃんのあのやり取りを目の当たりにして。
それでいて集中なんて出来るわけがない。
正直 翔ちゃんが先に帰ってて、と言った時は驚いた。
大ちゃんから聞いたばかりのことが次々と起こっていくのだから。
なんの為にどこに行くのか、理由を聞き出そうとしたが大ちゃんに止められ。
俺は口を噤む他なかった。
「だからって、部活に支障が出てるようじゃダメでしょ」
部活終わりのファミレスで暇を潰すと同時にそれに付き合う風間ぽんにも同じように咎められる。
俺の言い分としてはさっきと全く変わらないのだが、「大野先輩だって考えがあってのことだろ？」と強く押されると何も言えない。
「第一 そこで相葉ちゃんが聞いたとしても櫻井先輩がそう簡単に答えるとは思わないけど…」
それは充分に考えられる。
大ちゃんですら答えを焦らした翔ちゃんが俺なんかにまともに答えてくれるとは思えない。
「でも勢いっていうか…止められなかったんだよね」
「分からないこともないけど、やっぱりそれは大野先輩と櫻井先輩のことなんだし…」
俺達にはどうしようもない、と言いたげな風間ぽんに悔しくなる。
諦めたくない。
こんなに大切だと思う存在はないと心から思えて、もっと二人のことを知りたいと思える。
「今の俺じゃどうにもならなくても必ず翔ちゃんに頼ってもらえるような俺になる」
風間ぽんはさっきまでの俺のように、悔しそうに下を向いて口を開く。
「俺にも、なれるかな？」
「…なれるよ、絶対。でも風間ぽんは、まずは喋ることからじゃない？」
「そうだね」
俺は翔ちゃんをもっと知りたい。
好きな食べ物も苦手なタイプも、一人で抱えている大ちゃんですら知らないものも。
「相葉ちゃん」
「うん？どうかした？」
いつもとどこか違う風間ぽんの雰囲気に俺も心配の目を向ける。
「相葉ちゃんならなれるよ。櫻井先輩を救える存在に」
「…うん。ありがとう」
この時はこの言葉の意味なんて分かっていなかった。
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作者名：未翔
| 作成日時：2019年7月10日 21時
