ONLY LOVE 2【ARS】 (ページ3)

今日:20 hit、昨日:0 hit、合計:140,572 hit

46 向き合う辛さ。ページ3

side.M

正直、あの報告会に出たことで何かが変わった訳ではない。

むしろ、何も変わっていない。

和には前を向こう、大丈夫だなんて堪えていない振りをしたが、本当は悔しくて悔しくて…言葉にならなかった。

もしかしたら、翔さんが少しでも良くなるんじゃないかって。

そんな願いすら浅はかだったと思い知るには充分すぎる答えだった。

『原因は様々に考えられる。でも、それを乗り越えない限り櫻井さんが回復するとは思えない。そんな状態が長く続くことがどう繋がるかキミにも分かるだろう？』

英語で告げられたこの言葉を働かない頭に日本語となって入ってくるには相当な時間が掛かった。

『心当たりがあるなら、私はカウンセリングを勧めるよ。逃げているばかりじゃ病状は悪化するばかりだ』

海外のお偉い先生が言うことは…なんて考えていた頃を思えば思うほど虚しくなった。

俺達が続けたきたことは間違いだ、と全てを否定されたような気がした。

今でも何の前触れもなく過去に怯える翔さんの姿を見続ける俺たちにとって翔さんが過去と向き合うことがどれほど辛いことか痛いほど分かる。

自分自身ではどうしようもない恐怖に堪らなく怖くなる、と嘆く翔さんを俺は知っている。

「簡単に……カウンセリングなんてっ、」

俺がニューヨークに行ったのは間違いだったのだろうか。

何も知らないくせにとそう思ってしまうのは、俺の心の歪みなのかもしれない。

翔さんにとって何が一番の支えになるのか。

苦しむ姿を見たくない、ではなく苦しんだ翔さんを傍で支えるのは俺たちしかいないのだ。

貴方は沢山の言葉を教えてくれる。

『目を背けることは時に必要だ。でも、背けてばかりでは何も変わらないってことだよ、潤』

この言葉は他でもない翔さんがくれた言葉だった。

「なんでっ、この言葉なんだよ、、」

和も自室に帰り、俺は一人リビングでワインと共に暗い夜に酔いしれた。

ふと周りを見渡せば、リビングにはぶっ潰れた大野さんと雅紀の姿があり、その肩には和が掛けたであろう毛布があった。

きっとこの二人も和と同じように気になっていただろう。

それでも聞いてこなかったのは、翔さんを一人にしたくなかったから。

大野さんのような安心させてあげる存在でも、雅紀のような希望を与える存在でもない俺に何が出来るだろうか。