55 お昼時の番組。 ページ16
side.N
今日は家に俺と翔ちゃんの二人きり。
こんな珍しい事の原因は、相葉さんが実業団チームの見学に、潤くんは普通に講義で、大野さんは個展の話が出ていてそれの打ち合わせ。
俺は今日は講義もないし、バイトもない。
てなワケで俺と翔ちゃんだけってこと。
朝には大野さんから散々、翔ちゃんを宜しくと頼まれた。
俺が講義やバイトでも入ってるもんなら絶対打ち合わせなんか行かないって、休んでそうだ。
「翔ちゃーーん。そろそろお昼出来るよー」
２階にいる翔ちゃんに聞こえるように大きな声で呼ぶ。
今日は2人だし、暑いし、素麺にした。
胡麻ときゅうりを和えてつけダレを作っていると、ちょうど翔ちゃんが下りてきた。
「おっ、今日は素麺か」
「今年はまだ食べてなかったでしょ？」
「そうだっけ？まぁ確かに暫くは食べてないか…」
覚えてないのか、と思いつつ冷やした素麺とつけダレを持って翔ちゃんがいるテーブルまで運ぶ。
翔ちゃんは机に置かれた特製のつけダレに興味深々で何が入っているのか、どうやって作ったのかなど色々と聞かれた。
「じゃ、いただきまーす」
お昼時、テレビを付ければバラエティーやワイドショーなど普段は見ない番組ばかりだ。
「翔ちゃんって、いつもこの番組見てるの？」
「うん、そうだけど……チャンネル変える？」
「いや、全然このままで」
翔ちゃんが見ていたのはバラエティーでもワイドショーでもなかった。
某報道番組だった。
「この時間に報道番組なんかやってるんだね」
普段この時間にテレビを見ない俺には意外だった。
真剣に、アナウンサーの言葉に耳を傾けては、何か出来ることはないかと色々と俺に話してくれた。
「大野さんも見てるの？」
「最近は毎日見てるから智くんはよく絵を描いてるよ」
あぁ、飽きちゃったパターンか。
でも寝てないだけマシだな。
＿＿ここで先日明らかになった行方不明になっていた深山香苗さんの事件についてです。香苗さんの長男の小学二年生の深山彰人くんが家に一人で取り残され……警察は犯人の
アナウンサーの話す内容に食い入るように聞き続けて、慌ててテレビを消した。
「……翔ちゃん」
不安になって出た声は小さいものだった。
「大丈…夫だか…ら。だいじょ、ぶ、」
どこが大丈夫なの？なんて言えない。
もっと早くテレビを消していたら、俺がチャンネルを変えていればよかった。
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作者名：未翔
| 作成日時：2019年7月10日 21時
