53 怖さに怯える。 ページ14
side.O
松潤から連絡が着いたと声が掛かり、翔くんを連れて下に降りる。
翔くんがテーブルに着くとさっき作っていた料理とは違うスープが出てきた。
温まるからと松潤が翔くんに飲ませる。
「もうすぐ帰ってくるってさ」
「一体何してたっていうんだよ…この時間に」
俺のこの言葉に翔くんも松潤も何も言わない。
ただ二人とも悲しそうな顔をしているのを俺は分かっている。
自分自身でも理解してるつもりだ。
「ただいま。遅くなってごめん」
玄関が開く音がして、ニノと雅紀が帰ってきた。
リビングに入ってくる時のトーンが雅紀にしては随分と低い。
きっと俺が怒ってると思ってるせいだな。
「おかえり、雅紀。和からある程度聞いてるけど、二人とも連絡は取れるようにしててよ」
俺が何も言わずにいるのを見計らい、松潤が話し出した。
俺の思っている事も全て伝えてくれた。
対して俺は、全く成長していない。
「ごめん、大ちゃん。翔ちゃんにトマトスパゲティ作ってあげたくてさ……」
「それでも連絡ぐらい出来るでしょ？本当に心配したんだから」
優しい雅紀の心遣いも素直に感謝出来なくて、褒めてやれなくて。
当たりの強い言い方しか出来なかった。
それでもそんな俺に逆ギレすることもなく、シュンとしている雅紀を見ていると、どんどん自分が馬鹿らしくなった。
「ごめん、雅紀。大人げなかったな。トマトスパゲティ作ってやって、ねっ？翔くん」
「うん、食べたい！」
パッと花が咲いたように笑う。
雅紀は強いな、本当に。
でも俺は、まだ怖いんだ。
翔くんが悲しい顔をするのを見ることが怖くて怖くて堪らないんだ。
涙が零れそうになるのを察し、慌ててリビングを出た。
俺に涙なんて、見せる資格はないんだから。
「別にあんただけじゃないでしょーよ」
ふと肩に手を置かれ声のする方を見れば、やはりニノの顔があった。
「……分かってるよ」
強がっていることもニノにはバレているのだろう。
「怖いのもあんただけじゃない。俺だって怖くて怖くて堪らないんですから」
そう言ってニノは涙を零した。
忘れていたことがある。
ニノはこんな俺より強がりで、でもその分怖がりだってことを。
「大丈夫だよ、絶対」
「なんの根拠ですか、本当に。泣いていたと思えばいきなり強がるんですから」
俺たちの涙が尽きるにはしばらく時間が掛かった。
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作者名：未翔
| 作成日時：2019年7月10日 21時
