34 涙の本音には。 ページ37
side.S
＿＿雅紀。
そう何度も声を掛けようとした。
でも、どこか焦らしている俺がいる。
雅紀がいるソファーに行こうとするのに途中でUターンして帰る、という繰り返し。
雅紀はテレビを見てるから気付いていないはずだけど、潤やニノは明らかに不安そうな顔と不審がる顔。
そんな俺を見かねた智くんが雅紀に手招きをして俺に頑張れ、と言う。
不思議そうに俺の方にきた雅紀は俺の隣に座る。
その瞬間にはもう、潤もニノも智くんもリビングから消えてるからビックリ。
「あのさぁ、雅紀」
「ん？」
「この前のプロ入りの話。受けてくれないかな？」
俺がそう言った途端に雅紀の顔色は変わった。
いつもの優しい雅紀じゃないな、なんて咄嗟に思う。
「翔ちゃん。俺はこの前話した通りバスケで食べて行きたいなんて思ってないんだよ？」
嘘だよ、そんなのウソ。
「見てれば分かる。本当はやりたいって思ってる。でも、俺のせいで……」
「俺は雅紀に我慢して欲しくない。ましてや俺のせいなんて…そんなの絶対耐えられないから」
前と言ってること違うなぁ、と思いながらも言いたいことは全部言えた。
「……翔ちゃん」
隣に座る雅紀の顔を正面から見ることは出来ないが、泣いているということは直ぐに分かった。
「ホントのこと言って。我慢なんてしなくていいんだから」
その涙が雅紀の答えでしょ？
悩んで悩んで出した、いや、ずっと隠していた本音か。
「翔ちゃんの、傍にいたいよ……俺、離れたくない」
俺の腕を掴んで目に涙を浮かべて繕う雅紀は、俺にとって大切な後輩で、友達で、家族だ。
「大丈夫。俺、強くなるから。雅紀が心配しなくてもいいやって思うぐらい強くなるから。だから自分のやりたい事やりな」
「でも、ありがとう。俺のために」
横を向いて涙で濡れた雅紀の顔をそっと拭い抱きしめた。
「明日、ちゃんとコートと話してくる」
「うん」
雅紀なら絶対に大丈夫。
ちゃんとやっていけるよ。
「俺は雅紀の一番のファンだから。ずっと、ずっーと応援してるから」
「知ってる。今日も見てたんでしょ？」
俺がえっ？と言えば雅紀は笑ってこう言った。
「翔ちゃんの声が聞こえたんだ。雅紀なら絶対決めれるよって」
「それは雅紀の空耳でしょ？」
「えーちゃんと聞こえたんだって！」
そっか、届いてたんだね。俺の思いは。
雅紀は未来を生きる人だよ。
ずっと輝いてる。俺はそれを見ていたい。
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未翔(プロフ) - 蒼星さん» 読んで頂きありがとうございます。そう言って頂けると有難いです。出来るだけ更新したいと思いますので、これからもよろしくお願いします。 (2019年5月26日 12時) (
レス) id: b3cb87418b (このIDを非表示/違反報告)
蒼星(プロフ) - 初めまして。毎回更新を楽しみに拝読しております。わざわざ更新出来ない旨のご連絡ありがとうございます。読者は作者様から与えて頂くもので楽しませてもらっていますので多少の待ち時間は気にならないです。お気になさらずこれからも楽しみに待っています。 (2019年5月26日 11時) (レス) id: c0123debb3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：未翔
| 作成日時：2019年5月19日 21時
