14 不安の種には。 ページ14
side.O
四月も終わりに近付き、俺も翔くんと一緒に居る時間が慣れ始めたこの時期。
最近の翔くんは朝ごはんが終わったら大抵、中庭の前に置いている椅子で庭を見ながらくつろいでいる。
その後、調子がいい日は買い物に出掛けたり、俺が昼飯を作るのを見ていてくれたり、本を読んだりと割と自由に過ごしている。
で、今はまさに中庭をぼっーと見ている。
俺はそんな翔くんの横顔を描いているのだが明らかにいつもと様子が違う。
描いていた手を止める。
中庭を見ているはずの翔くんは顔を下に向けて、自分の腕を抱き締める形で座っていた。
“寒い”とは言わず腕だけを抱き締めている。
しまった、と後悔するのと同時に翔くんの呼吸が乱れ始めた。
「はぁｯ…はっ……さむｯさむい」
「大丈夫。すぐ良くなるからね〜」
声を掛けながらブランケットを引ったくって翔くんに巻き付ける。
乱れた呼吸が戻る様子が見れないことに不安を覚え始めた頃に、その原因は分かった。
「はぁ…さと、しくん……ニノ…ニ…ノ」
「ニノ……あっ、大丈夫。ちゃんと帰ってくるよ」
「でもｯ、ニノ…まだ」
まだ帰ってこない。
そう言いたいのだろう。
「大丈夫だよぉーもうすぐ帰ってくるから。だから少し眠ろうか」
キッチンに走り、戸棚に入っている薬を手に翔くんの元に戻る。
呼吸が落ち着いたのを確認してから薬を飲ませる。
少しずつ瞼が落ちていった。
「やっぱ、不安だったんだな」
翔くんが眠りに着き、原因を考える。
翔くんが呼吸を乱すほど、酷い症状になったのは随分と久しぶりだ。
ニノは一昨日からゼミ旅行に行っていて、明後日までは帰って来ない。
翔くんがニノを呼び続けたのは、恐らくこの家に帰って来ないかもしれないと思ったから。
「ごめんね、翔くん。俺のせいで」
翔くんの症状は一般的に冷え症といわれるもの。
しかし冷え症は西洋医学ではきちんとした病気の1つとして扱われていない。
名前をつけるなら、血行不良とでもなるのだろう。
その原因には自律神経や心臓、筋肉の動きなどが関係しているものと考えられている。
翔くんは元々、冷え症ではあったが今ほど酷くはなかった。
こんなに苦しむようになったのは少なからず俺に原因がある。
それが分かっているからこそ誰よりも心配になり、不安になり、傍に居たいと思うんだ。
「ちゃんとニノ、帰ってくるから」
赤っぽくなった手を見つめ、そう声にした。
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未翔(プロフ) - 蒼星さん» 読んで頂きありがとうございます。そう言って頂けると有難いです。出来るだけ更新したいと思いますので、これからもよろしくお願いします。 (2019年5月26日 12時) (
レス) id: b3cb87418b (このIDを非表示/違反報告)
蒼星(プロフ) - 初めまして。毎回更新を楽しみに拝読しております。わざわざ更新出来ない旨のご連絡ありがとうございます。読者は作者様から与えて頂くもので楽しませてもらっていますので多少の待ち時間は気にならないです。お気になさらずこれからも楽しみに待っています。 (2019年5月26日 11時) (レス) id: c0123debb3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：未翔
| 作成日時：2019年5月19日 21時
