11 大人に子ども。 ページ11
side.A
練習が終わって更衣室で着替えて講義を受けるC棟に行く時だった。
聞き覚えのある声に呼び止められたのは。
「相葉さん」
「ニノ…さっきぶりだね」
きっと俺がどんなトーンでもこいつに適わない事は分かっているから、目を伏せながらそう返した。
呼び止めたくせにニノから何かを発することは無くて、俺が話すまでは何も言わないつもりだな。
「ニノ、最初の講義ってまだ？」
「えぇ。今日は三限からですから」
じゃあ、こんな時間に来ているのは俺に会うため、もしくは……
正直、今の俺は目に見えて凹んでいると思う。
少なからず、大ちゃんの絵に繋がるような事を言ったのは俺だし、翔ちゃんを傷付けたのも俺。
自業自得のくせに翔ちゃんとギクシャクしたまま大学に来たことを後悔していないわけは無くて。
さっきの朝練も全く身が入っていなかった。
「翔ちゃん、大丈夫？」
ニノの中ではきっと、この質問も想定内だろう。
「大丈夫ですよ。今頃、大野さんと仲良くやってんじゃないですか？」
「そっか、、」
よかった…？
何がそっか、よかっただよ。
俺は翔ちゃんを傷付けたままじゃんか。
「別にあんたが何かした訳じゃないんだから、そんな辛気臭い顔しないで下さいよ」
「どうせ、大ちゃんにもそんな事言ってたんでしょ？」
少し顔が引き攣るのが図星の合図だ。
ほんと、昔からニノには弱いんだよな、俺。
「当たり前でしょうが。
俺が相バカに負けるわけないだろっての」
でも、たまにはそういう可愛い所も見せてくれないと。
「少し、ほんの少しね、今も思うんだ。
こんな現実なくなればいいのにって」
「俺だって、思いますよ」
「でも、俺達が翔ちゃんの為に出来る事は一緒に暗くなることじゃない。照らしてあげる事じゃありません？翔ちゃんがそう思っても、俺らだけは大丈夫って信じてあげないと」
俺より一つ年下のくせに、いつもどこか大人びた考えを持っていたニノは、
いつの間にか俺を追い越して大人になっていた。
「だね。俺らが着いてるって。
いつだって翔ちゃんに教えてあげなきゃ」
「相葉さんにしか出来ないこともあるんですから」
「今日はえらく褒めてくれるじゃん！」
「あーぁ、褒めて損した。
調子乗んじゃねぇ、相バカのくせに」
こいつになら、ニノになら。
こんな事を言われても嬉しいと思える。
それは俺にとってかけがえのない人だから。
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未翔(プロフ) - 蒼星さん» 読んで頂きありがとうございます。そう言って頂けると有難いです。出来るだけ更新したいと思いますので、これからもよろしくお願いします。 (2019年5月26日 12時) (
レス) id: b3cb87418b (このIDを非表示/違反報告)
蒼星(プロフ) - 初めまして。毎回更新を楽しみに拝読しております。わざわざ更新出来ない旨のご連絡ありがとうございます。読者は作者様から与えて頂くもので楽しませてもらっていますので多少の待ち時間は気にならないです。お気になさらずこれからも楽しみに待っています。 (2019年5月26日 11時) (レス) id: c0123debb3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：未翔
| 作成日時：2019年5月19日 21時
