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「爆発させるぞ！」
背後から怒声が上がる。
ゆっくりと振り返ると、梅沢が顔を真っ赤に紅潮させて睨んできていた。
「なにか言った？」
「この爆弾はちょっと動かしただけで爆発するんだろ。今すぐにこれを解体しないと、俺はこれを放り投げて爆発させる。そうしたらお前も道連れだ！」
「好きにしたら」
はぐみがあっさり言うと、
梅沢は腫れぼったい目を見開いて絶句した。
「まだ分かってないのね」
はぐみは冷然と言う。
「私にとって、夫と娘は人生の全てだったの。二人がいなくなった時、私にとってこの世界には何の意味もなくなった。最初から私は避難するつもりなんてないのよ。復讐が終わったと同時に、私に生きる理由なんてなくなるんだから」
はぐみのセリフを聞いて、紅潮していた梅沢の顔からみるみるうちに血の気が引いていく。
はぐみは微笑みながらソファーに腰掛け、ぱちぱちと薪が小気味良い音を立てる暖炉に視線を向けた。
あと少しでそっちに行くから、待っていてね。
はぐみは胸の中で、愛おしい夫と娘に声をかける。
そのとき、背後で扉の開く音が響いた。
はぐみは弾かれるようにソファーから立ち上がる。
入口にはコートを着た小柄な男が立っていた。
「二宮先生?!」
はぐみは目を見開く。
「あ、中は暖かいですね。助かったよ。外は雪が降ってるから、体冷えちゃってさ」
ログハウスの中に入って来た二宮和也は、コートについていた雪を払った。
「なんで……二宮先生がここに？」
はぐみは警戒しながら二宮を睨む。
「何でって、はぐみさんを追いかけてきたに決まっているじゃないですか。あれ、そこに居るのって梅沢社長？ああ、はぐみさんの復讐相手って、この人だったんですね」
二宮は一人でうんうんと頷く。
「私が攫われたんじゃないこと、気付いてたんですか？」
はぐみが低い声で訊ねると、二宮は不思議そうに首を傾げた。
「当たり前じゃないですか。相葉さんとかが言っていたでしょ、俺は人の心を読む妖怪だって。まあ、実際は完璧に読めるわけじゃないけど、確かに普通の人よりは他人の思考を読めますよ」
そこで言葉を切った二宮は、はぐみに微笑みかける。
「例えば、東陽町で拉致されたあと、はぐみさんが家族についての記憶を取り戻したこととか、爆弾を使って恨みのある誰かを殺そうとしている事とかね」
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作者名：未翔
| 作成日時：2023年8月9日 21時
