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女が両手に白い布を持って、ごしごしと
顔を拭いていた。
メガネはいつの間にか傍らに置かれている。
この女いったい何を？
田村が呆然としているうちに、
女は顔から布をはなす。
布の下から出てきた顔を見て、田村はサングラスの下で大きく目を見開いた。
女の顔は一変していた。
弱々しく垂れ下がっていた目は、意志の強そうな切れ長になっており、つい先ほどまで醸し出していた儚く弱々しい雰囲気が完全に消え去っている。
そして何より、女ではなかった。
いまソファーに座っているのは全身から色気と生命力を漲らしている、はっと息を呑むような美しい男だった。
「あれ、どうしたの？鳩が豆鉄砲くらったみたいに。女が化粧で変わるのなんて常識でしょ。まあ、俺はれっきとした男だし、化粧だけじゃなくて特殊メイクとかで使う接着剤も使っているんだけどね。けっこう美寿々さんに似てたでしょ」
男がけらけらと楽しそうに笑うと、隣に座っていた少年が気怠そうに目深にかぶっていた帽子を取った。
その少年の顔は住吉美寿々の息子とはまったく違っていた。
かなり小柄だが小学生ではないだろう。
おそらく中学生か高校生ぐらい……。
「この人達さ、驚いているんじゃなくて相葉さんのすっぴん見て硬直してるんじゃないの？さすがに三十路でそれはきつい……」
少年が皮肉っぽくつぶやいた瞬間、男は素早く少年の両こめかみを拳でぐりぐりと挟み付ける。
「何度も言うけど俺はまだ28歳！三十路じゃねえっての。それに、俺のすっぴん見て硬直ってどういうことだよ」
額がぶつかるほどに少年に顔を近づけながら力強い口調で言う。
少年は、「痛い痛い。ごめんなさいごめんなさい」と悲鳴を上げる。
「僕だって小学生の振りさせられたんだ。
文句の一つや二つあるっての……」
ようやく解放された少年は、
ぶつぶつと口の中で文句を転がす。
いったい何なんだ？
なにが起こっているんだ。
田村はいまだに動けなかった。
「ふう、けど顔も引きつって痛いし、
体も胸も重いしで大変だった」
男は立ち上がると唐突にワンピースを
脱ぎ出す。
ワンピースの下には
Tシャツとジーンズを着ていた。
腹部にはバスケットボールが腹巻きで固定さ
れ、胸元にはきつくサラシが巻かれていた。
男は素早く腹巻きとサラシを外す。
「それでにのちゃん。この人達が
さっき言ってたことって、全部本当なの？」
大きく伸びをしながら男は少年に訊ねた。
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ここここ(プロフ) - はじめまして！！！最近この作品と出会いまして、面白すぎて一気読みしました！読みながら「この人が怪しい、いやあの人も怪しいな…」と推理しながら読みましたが、まだまだ私の推理は稚拙なものでした…笑 続編も楽しみです！ (2021年11月18日 19時) (
レス) @page44 id: 6c5860f770 (このIDを非表示/違反報告)
未翔(プロフ) - stormさん» 読んで頂きありがとうございます。続編の方も宜しくお願いします！ (2021年11月12日 12時) (レス) id: 53c29ae25f (このIDを非表示/違反報告)
storm - どうも！とうとう完結か…とfin.の文字に寂しさを感じていた私ですが、続編という文字を見て舞い上がりましたw本当に完成度が高くて、すごくハラハラドキドキさせられる、素晴らしい作品でした。完結までお疲れさまでした！そして続編でもお世話になります！ (2021年11月9日 22時) (レス) @page43 id: 5bdda0872c (このIDを非表示/違反報告)
未翔(プロフ) - 彌生さん» 初めまして。読んで頂きありがとうございました。是非、続編でもドキドキを味わって頂けたらと。 (2021年11月9日 16時) (レス) id: b3cb87418b (このIDを非表示/違反報告)
未翔(プロフ) - あきらさん» 初めまして。サスペンスが好きなんですね。楽しんで頂けたようで良かったです。 (2021年11月9日 16時) (レス) id: b3cb87418b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：未翔
| 作成日時：2021年9月24日 20時
