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「そう、ゆっくりと呼吸を続けて。
手足とみぞおちが温かくなっていく」
「……はい」
櫻井は目を閉じたまま答える。
二宮の声はなぜかエコーがかかっているか
のように響き、体に染みこんでくる
ようだった。
記憶の再生を頼んだ櫻井を、二宮はすぐに
ソファーに横たわらせ、催眠術を開始した。
本当にこんなことで記憶を呼び起こすことが
出来るのか最初は疑問だった。
しかし二宮の指示に従い呼吸を整え、
その声を聞いているうちに、意識はあるのに
眠っているような、温かい液体の中に浮いて
いるような不思議な感覚に陥っていた。
「準備OK。思った通り簡単に催眠導入できましたね。やっぱり脳筋って単純だよね」
なにやら失礼なことを言われ、櫻井は
目を閉じたまま身じろぎをする。
「おっ、やばいやばい。せっかくうまく導入
出来たんだから、さっさとやっちゃわないと
ね。それじゃあ翔ちゃん、何が見えるかな」
「何も……見えません」
櫻井は目を閉じたまま答える。
「そんなことはないよ。よーく辺りを見てみ
なって。川奈雄太の顔を思い出しながら」
二宮に言われた通り、櫻井は写真に写ってい
た川奈雄太を思い出す。
そのとき、暗闇に明かりが灯ったかのように
感じた。
夢の中にいるような心地で
櫻井は周囲を見回す。
「ほら、見えたでしょ。
それで翔ちゃんはどこにいるの」
「待合……、病院の待合にいます……」
櫻井は熱に浮かされたような口調で答える。
そう、櫻井は薄暗い外来待合に
一人で立っていた。
「病院、それは翔ちゃんが前に勤めていた
四葉記念病院の外来かな？」
「いえ、……違います。ここは四葉記念病院
じゃありません。ここは……」
櫻井はそこで言葉を切ると、
うめき声をあげる。
「焦んなくていいよ。深呼吸をするんだ。
なにも怖がることなんてないんだよ」
二宮の柔らかい声が聞こえてくる。
櫻井はもう一度、待合を見回した。
「ここは、勝本病院。
……俺が医療事故を起こした病院です」
「勝本病院？……そこになにが見える？」
二宮の訊ねる声が聞こえてくるのと同時に、
待合の奥に倒れている人影が見えた。
あの日と同じように……。
「患者が倒れています……。
俺が助けられなかった患者が……」
「その患者の他には？」
「患者のそばに看護師がいます。
中年の看護師です」
「そうですか
……それじゃあ、その二人に近づくんだ」
二宮の指示に櫻井はすぐに従うことが
出来なかった。
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あきら(プロフ) - 初めまして楽しく拝見してます。リクエスト募集中と云う事なので、私は山担なのでそれも赤さんを全力で守る青さんが大好きです。なので赤さんが弁護士で危険な案件に係わって、それを元刑事の青さんが助ける!サスペンスドラマ大好きなので、ハラハラドキドキしたいです (2021年9月23日 18時) (
レス) @page47 id: 0cb62e1ff0 (このIDを非表示/違反報告)
未翔(プロフ) - いちごさん» 嬉しすぎます！お気になさらず、ぜひ是非楽しんでいってください！ (2021年9月23日 17時) (レス) id: b3cb87418b (このIDを非表示/違反報告)
いちご(プロフ) - ありがとうございます。作品とても楽しくて夢中になって読ませて頂いていました。そそそそれなのに。本当にごめんなさい。 (2021年9月21日 20時) (レス) id: f705c60b1b (このIDを非表示/違反報告)
未翔(プロフ) - いちごさん» 全然大丈夫です！！評価ボタンを押そうとして頂いただけで幸せです👏🏻 (2021年9月21日 18時) (レス) id: b3cb87418b (このIDを非表示/違反報告)
いちご(プロフ) - 10を押そうとした時猫が来て手が滑りました。ごめんなさい。 (2021年9月21日 14時) (レス) id: f705c60b1b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：未翔
| 作成日時：2021年5月25日 21時
