第１章−４− ページ36
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調子わりぃな……。
大音響が響く地下から１階へと上がった
浅井正平は、大きく舌打ちをしながら
バーカウンターに近づく。
久しぶりに女を漁りにクラブにやって来た
というのに、収穫はゼロだった。
気になった女に声を掛けても、
ほとんど無視され、少し話ができたと
しても、ドリンクを奢るとすぐにどこかに
消えてしまう。
ほんの数分前にフロアの端で
つまらなそうにしていた女に声をかけ、
体に手を回して強引に踊ろうとしたら
女の連れのガタイの良い男が来て、慌てて
逃げるようにこの1階へと上がっていた。
正平は声を掛けられそうな女がいないか
フロア全体に視線を送る。
しかし、地下のダンスフロアとは違い、
このバーフロアにいる女達は、
そのほとんどが男連れだった。
正平はもう一度舌を鳴らすと、
カウンター席に腰掛け、ビールを
注文する。
愛想の悪いバーテンダーは正平を一瞥すると
無言のままカウンターにグラスビールを
置いた。
ありがとうございます、ぐらい
言えっつうんだよ。
さらに苛立ちを募らせながらも
代金をバーテンダーに手渡すと、
正平はビールを口の中に流し込む。
みぞおちに軽い痛みを覚え、
正平は顔をしかめた。
ここ数日、胃がきりきりと
痛むことが多かった。
原因は分かっている。警察だ。
数日前から警察が何度もくり返し、
自宅アパートを訪れていた。
そのたびに、「話すことなんて
なんにもねえよ」と追い払っているのだが、
しつこくやってくる。
話せるわけねえだろ。
チクったってことがバレたら、
俺もあいつみたいな目にあうかも
しれないんだぞ。
友人がどうなったかを思い出した瞬間、
正平の背中に冷たい震えが走った。
正平は恐怖を誤魔化すように、
グラスに残っているビールを一気に
あおる。
そのとき、背後で「キャッ」と
小さな悲鳴が上がった。
反射的に振り向いた正平の手に
液体がかかる。
女がつまずいて手にしているカクテルを
こぼしたらしい。
一張羅のジャケットの袖が濡れ、
正平は表情をゆがめる。
「何しやがるん……」
そこまで言ったところで、怒声は
口の中で霧散した。
「す、すみません。濡れちゃいましたよね」
女は困惑の表情を浮かべながら、
ジーンズのポケットからハンカチを
取り出し、正平の手を拭いた。
正平は口を半開きにして、その女を眺める。
切れ長の目、細く高い鼻、
そして真っ赤な口紅がされた肉感的な唇。
その顔は息を呑むほど魅力的だった。
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未翔(プロフ) - あきさん» 読んで頂いてありがとうございます！ここから更に急展開ですのでお見逃し無く！！ (2021年5月25日 22時) (
レス) id: b3cb87418b (このIDを非表示/違反報告)
未翔(プロフ) - shioribaron0307さん» ありがとうございます！ (2021年5月25日 22時) (レス) id: b3cb87418b (このIDを非表示/違反報告)
あき(プロフ) - うわぁ〜急展開！！ワクワクしますね。続きを楽しみにしてます。 (2021年5月25日 15時) (レス) id: de45e6159d (このIDを非表示/違反報告)
shioribaron0307(プロフ) - お話面白かったです。続き楽しみにしています！ (2021年5月22日 14時) (レス) id: 7628593eb6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：未翔
| 作成日時：2021年5月15日 12時
