失恋日記【AS】 (ページ6)

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＊限界ページ6

[side.A]

もう限界だった。

辛そうに笑顔を作る彼を見ているのは。

ニノを見るたびに泣きそうになるのをずっと堪えているように見えて何度も背中を摩りたいという衝動を必死で抑えていた。

彼のことを好きになったのは随分と昔だ。

だから彼が誰を想っているのか。
そんなことも簡単に分かる。

でも俺たちは大切な仕事仲間でメンバーで。
家族以上に長い時間を過ごしてきた。

だからこそ今の関係が壊れることを恐れていた。俺も翔ちゃんも。

翔ちゃんが動かないなら俺も動くわけにはいかない、とそう思っていた。

・

あ、いま彼女らしき人がいるんだろうな。

というのは何となく分かる。

プライベートなことだし野暮に聞くことじゃないけど、長年の付き合いも伊達じゃない。

ニノからそんな雰囲気をいち早く感じ取った俺は翔ちゃんを飲みに誘った。

「ごめん相葉くん。今日はちょっと」

「そっか。じゃあ来週は？」

「……ごめん来週も」

ここで簡単に諦めるわけにはいかない。

翔ちゃんは深夜に仕事が終わって翌日の入り時間が早かったとしても「何かあったか？」って後輩や俺たちメンバーのことを気に掛けてくれる人だ。

例え忙しくても直ぐにスケジュールを確認して埋め合わせをする。

カッコイイ兄貴で馬鹿な俺に合わせて付き合ってくれて。忙しいことを理由に俺の誘いを断るなんてことは今までに一度だってなかった。

そんな彼が理由もなしに断るのは不自然だった。

「あのさ、相談があるんだ」

「相談？」

「そう、翔ちゃんに聞いてほしくて」

少し汚いやり方だけど、好きな人の為なら俺はやる。

深刻そうにしたつもりはないけど、俺のトーンの変化を察した翔ちゃんは「夜遅いけど明日ならいいよ」と言った。

「ありがと。俺の家でもいい？」

「いいけど珍しいね」

「たまにはありでしょ」

ごめんね翔ちゃん。

でも俺は心配なんだ。
自分の気持ちに蓋をし続ける貴方のことが。

・

「一生、愛じゃなくて恋でいい。恋は一般的に相思相愛のイメージ。きっと楽しいはずだから」

これ間違ってたね。

全然、相思相愛なんかじゃないけど。
でも俺は翔ちゃんに恋してるんだ。

ずっと傍にいたいし、本物の笑顔にさせる。

だから翔ちゃんの視線が欲しい。

ニノ、俺は翔ちゃんのこと支えるよ。

俺の気持ちなんか後回しで良い。

今はただ翔ちゃんを守りたいんだ。

いつか必ず翔ちゃんの視線の先にはニノじゃなくて俺がいるようにするから。