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日常が過ぎていく。
年末に向けて加速していくライブの打ち合わせや番組収録。
休む暇もなく仕事に追われていた。
そんな中、彼と二人きりで記者会見を行うことになった。
今までも雑誌の取材など二人きりの仕事が多からずあった。
けれど、表舞台。
多くの記者の方の前に立つ機会はあの発表以降なかった。
いつも通りカメラに向かって笑顔を作る。
そう、これが俺の仕事なのだから。
進行して下さる方と彼と３人でトークをして、記者会見は終了した。
舞台上からはける俺とニノ。
けれど案の定、彼は記者の方とカメラに囲まれた。
俺はそんな彼を見つめながら足早に舞台から降りた。
控室に戻ってもこびり付いて離れないカメラに向けた彼の微笑み。
堂々とした彼の言葉たち。
ジャケットを脱ぎ、椅子に腰を下ろす。
さっきまで俺の横で笑っていた彼は、今はカメラに向かって笑っている。
何とも言えない優しい顔をしながら。
つーっと鼻先が冷たい。
視界が崩れる。
「俺、泣いてる？」
頬に手を当てれば涙の跡に触れる。
彼と一緒の控室じゃなくてよかった。
心からそう思った。
・
怒涛の年末を終えた。
大晦日、皆で笑って新年を迎えた。
年越し恒例で先輩や後輩と話しながら弁当を食べて会場を出る。
「今年もよろしくお願いします」
「こちらこそ。あ、翔さん」
「ん？」
「病院ちゃんと行ってくださいね」
ここ最近マネージャーから毎日言われている。
「顔色ひどいなんてもんじゃないですからね。他の皆さんから言われませんでした？」
「言われてないけど」
いや、言ってこないという方が正しい。
昔は言い合っていた。
「風邪ひいた？」とか「ちゃんと寝てる？」とか。
でも、今はもうお互い何も言わなくなっていた。
顔を見たら聞かなくても分かるし、聞いたところでこの忙しさをどうにも出来ない事は全員が理解していることだ。
「仕事始めは４日なんで。しっかり体休めてくださいね」
「りょーかい」
自分の体のことはちゃんと分かっている。
これがただの疲労じゃない事ぐらい。
・
想い続けることすら苦しいし叶わない。
でもこの想いをどうすることが正解なのか、それすら分からない位に俺はこの恋の出口を見失っていた。
「翔ちゃん」
そうやって俺を呼ぶ声が聞こえるんだ。
彼とはまた少し違う優しい声が。
「翔ちゃん、ずっと傍にいるよ」
貴方は誰？
この恋から俺を救ってくれるの？
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作者名：未翔
| 作成日時：2021年1月14日 9時
