__ ページ31
[side.N]
翔ちゃんは最近、よく夢を見ている。
それも良くない夢。
悪夢のせいで夜中に魘されることが増えた。
額には玉のような汗が浮かんでいて、苦悶の表情を見せる翔ちゃんを何度も見るのが辛くなっていた。
何が原因なのか。
俺が聞いても答えてくれる様子は全くない。
返ってくるのは「何でもないよ」というやせ我慢か「相葉くんが走り回ってる夢だったかな」という分かり易い嘘。
俺に出来ることは翔ちゃんの名前を呼んで、落ち着かせること。
それしか出来ないのがこの上なく悔しかった。
・
それから翔ちゃんの悪夢に関しては
何の解決も出来ないまま。
今日は地方ロケのため朝が早い。
普段なら相葉さんと2人きりの車内のはずだが、今日は違う。
俺の横に座る愛しい人の肩に
思いきり体重を掛ける。
いつもの肩。少し撫でた肩。
翔ちゃんがなで肩でよかった。
そのお陰であの時、
翔ちゃんを見つけられたんだから。
慣れた体勢でいつものようにゲームをする。
「ニノってホントにどこでもゲームすんだなぁ」
「おじさんには分からないんですよ。ゲームの魅力は」
「なんだそれ」
都心から一時間半。
相葉氏の運転で予定通りの時間に現場に到着した。
「ここで撮るの？」
「なんせ森の中のシーンがありますから」
ていうか、あんたが書いたんでしょうが。
今回は脚本家も一切手を加えずに
大野さんの原作通りの撮影になっている。
俺ももちろん原作は読了している。
なんなら翔ちゃんの解説付きで。
ふんわりとした空気を放つあの人がここまでメリハリのあるドラマを描けるとはさすがエリート作家と言われるだけのことはある。
「あそこが一番大事なシーンだからな」
「スタジオ撮影でいいと思うんだけどー」
「んなこと言って、ちゃっかり翔ちゃん連れてきて楽しんでるくせに」
「うっさい！相葉氏はちゃんと自分の仕事しなさいよ」
相葉氏に仕事をしろと言ってから俺もやらなきゃなと思い立ち「メイクしてくるから」と翔ちゃんに伝えて相葉氏の後を追いかける。
・
どうしてこの時一度も振り返らなかったのだろう。
それは俺が翔ちゃんの笑顔に
またすぐに会えると思っていたから。
そんな日常に甘えた結果が数十分後には最悪の形で突き付けられることになるとは、この時ですら俺は気付いていない。
翔ちゃんの優しい笑顔。
「ねぇ、もう一回笑ってよ」
「何だってするから翔ちゃんを返してよ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 327人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
未翔(プロフ) - 夜月さん» ありがとうございます！待って頂けていたというだけで嬉しいです。 (2021年4月17日 9時) (
レス) id: b3cb87418b (このIDを非表示/違反報告)
夜月(プロフ) - 更新ありがとうございます。 待ってました！ これからも頑張ってください！ (2021年4月16日 18時) (レス) id: f96e31a6df (このIDを非表示/違反報告)
夜月(プロフ) - コメント返しありがとうございます！ 全然ゆっくりで大丈夫です。 その分読み返したりしてます！ 日々の疲れを忘れることが出来感謝です。応援してます！ (2021年3月28日 22時) (レス) id: 3292546019 (このIDを非表示/違反報告)
未翔(プロフ) - 夜月さん» コメントありがとうございます！更新のペースはゆっくりになるかもしれませんがこれからも続けていく予定ですので、これからも宜しくお願いします！ (2021年3月28日 17時) (レス) id: b3cb87418b (このIDを非表示/違反報告)
夜月(プロフ) - 更新ありがとうございます！いつも楽しく見てました！少しづつでいいのでこれからも更新楽しみにしてます！頑張ってください！！ (2021年3月28日 15時) (レス) id: 3292546019 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：未翔
| 作成日時：2020年8月2日 12時
