第8訓 ページ9
-----
近「あ〜やっと来たァ！遅いぞAちゃ……」
A「僕にちゃん付けすんなって言ったでしょう近藤さん。
てかアンタもうだいぶ酒が回ってるんじゃないですか」
屯所に帰ると既に出来上がった隊士もいて、
「おおーっ！」
「Aさんお帰りなさい」
「相変わらず男前だなァ」
「よっ色男ーッ」
などなど…様々に野太い声が上がる。
『Aさんおかえりなさい』なんて横断幕もあるがこの空気から置いてけぼりである、完全に。
A「まったく……ただ理由をつけて酒を飲みたいだけだろう」
近藤「そんなことはないぞ！
ほら、Aちゃ…ンン"ッ！Aも帰ってきたことだし仕切り直すぞお前ら！」
「「「おかえり！」」」
皆の掛け声に フ、と思わず口元が緩む。
A「…ただいま。帰ってきて早々にアンタらの介抱は勘弁だぞ」
ワハハと大きな笑い声に包まれて帰ってきちまったなァなんて改めて思うのだ。
----------------
土「わりぃな、主役のお前ェにも片付けさせちまって」
A「まァこうなることは予想してやしたから、お気になさらず」
飲み会後、いつも通り近藤さん含めほとんどの隊士が酔いつぶれ、雑魚寝なり各自の部屋に運ばれるなりしたあとの簡単な片付け役は大体僕なのだ。
A「ったく困りまさァ。
僕がいない間は女中のおばちゃんたちに迷惑かけっぱなしだったでしょう」
土「そりゃもう怒られたぜ、おばちゃんたちにな」
その惨状を思い出したのか、ため息をついた土方さんは最後の皿を重ねるとタバコにマヨ(ライター)で火をつける。
ヤニ臭い煙を吐き出して土方さんは続けた。
土「…また戻ってきたんだな」
思わずため息を零した。
土方さんがそう言うのも僕が"女"であることを知っていて、
A「まだ認めてないんでしょう。僕が真選組にいることを」
土「………。」
"女"である僕のことを認めていないからだ。何度も聞いたお節介というか、説教。
土「出て行けなんて一言も言ってねえだろ。」
A「大丈夫です、心配しなくても"探し物"が見つかり次第出て行きやすから」
皿が積み上がったお盆を持って大部屋を出た。そしてその場に立ち止まった。
A「…あの土方さん」
土「な、なんだよ…」
A「皿を持って行きたいんですが、食堂ってどこでしたっけ…」
とんでもなく大きく、長い長いため息を吐かれたのでお盆は土方コノヤローに持たせて案内させましたとさ。
_
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 9人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：塩分 | 作成日時：2018年12月4日 23時
