鼬の道【ゴールデンカムイ】 (ページ9)

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第玖話: 収監された理由ページ9

「俺は幼年監獄でも既に何度か脱走していて、樺戸では看守から警戒されていた。監視は厳重だったよ。でも俺はなんとか脱獄した。

シスター宮沢は全国にある監獄の教誨で奉仕活動しているらしくてな、賭場にいる出獄したヤクザに聞いたりしていた。

監獄に出入りしているシスターなんて珍しいからな。全国の監獄を渡り歩いたよ。でも皆シスターを見ていないと言うばかり。

そして最終的には野菜泥棒で逮捕され、日本一厳重な監獄ならば逃走は不可能であろうとのことで、ついに俺は網走監獄へ収監されて…この通りって訳だ」

『…ってあれ、結局シスター宮沢はいたの？』

「あぁ、いたぜ、ここの教誨堂に」

『え、え！どうだった？別嬪だった？』

弓弦葉は期待で心が弾んでは質問の答えを待っていた。だが白石は喜んでいるような良い顔じゃなかった。

「はは、絵とそっくりだったよ」

笑ってはいるが目が死んだ魚のようである彼を見て、弓弦葉はそれ以上追求しなかった。

「それより！次は弓弦葉ちゃんの番だぜ」

『えー、といっても白石みたいに面白くないよ？うーん、強いて言うなら強盗と殺人かな？』

「んまっ、思ったより物騒！」

白石は手を口に抑えて夫人の真似事をする。

「んーでも弓弦葉ちゃんが犯罪を被るとは思えないなー、なんでまた？」

『えっと、青森から駆けて北海道へ来てね。あんパン(1個1銭:現代でいうと200円)が難しいくらいに懐が暖かくなかったから、行商人を待ち伏せしては食い繋いでいた。

花形職業も挑戦したが、みすぼらしい格好だから論外と言われてしまい、何せ利き手の人差し指がないから却下されることも多かった。

当時は毎日腹を空かせてたから、今は網走監獄に入って少しほっとしている自分がいる』

「そうだったのか…前に言ってたよな、一攫千金を夢見て来たって、なんでまた有り金はたいてまで北海道に？」

『…単純よ、金が必要だったから』

「へぇ〜まさに乾坤一擲(けんこんいってき)だな、絶対に博打場には行くなよ？」

『そんな金もないわな』

一通り話した後に、彼女は辺見にも話しかける。
彼は敷布団と掛け布団を敷いていて、丁度それが終わっていたのだ。

『辺見さん、辺見さんはなんで捕まったの？』

「私ですか？うーん…一般的には無差別大量殺人と言ったところでしょうか？」

「……成程」

冷静さが残る白石とは違い、弓弦葉は驚愕のあまり『ぇ！』と声が零れた。