鼬の道【ゴールデンカムイ】 (ページ6)

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第陸話: 何でも見境なくページ6

俱利迦羅紋紋(くりからもんもん)とは全く異なり、曲線と直線が交わっていたり、漢字が書いていたりと珍妙な入れ墨だった。

趣味なのかと思ったが、なんと岩息も形は違えど似たような入れ墨が掘ってあった。

『ねぇ白石、あの二人の体さ…』

「！」

歓声が響くなか、周りがうるさすぎて聞こえやしないはずの弓弦葉の小さな声を牛山辰馬は聞き逃さなかった。
牛山はキョロキョロと見渡すと、やはり巨体、飛び抜けて身長がデカい彼は、そんなに長くない時間を掛けてついに弓弦葉とパッチリ目が合う。

『あれ？こっち見てる、どうしたんだろう？』

「は？……しまった！牛山は確かッ…！」

「うぉぉぉぉぉ女ッ！！！！」

白石の「逃げて弓弦葉ちゃん！！」という言葉と同時に叫ぶ牛山を背に、弓弦葉は身の危険を感じて走り出した。
こわい、こわい！後ろから騒がしい音と声が、弓弦葉自身の体を酷く響かせる。

すかさず暴漢の前に岩息が立ち塞がる。

「おぉっと牛山さん！まだ私と「黙れぃッ！！」

「あはあッん！！！(歓喜)」

背負い投げされてあえなく撃沈。心無しか嬉しそうな岩息に気に留めない。性i欲が臨界を迎えた彼は、もう誰にも止められなかった。
幸い、足が遅いのでこちらに弊害がない限りは追いつくことはない。

第三舎の舎房及び中央見張り所へ向かっている道中、丁度看守が囚人を収監しているところを見つけ、鍵をかけられる前に強引に開けて転がりこむ。

看守の叱責が聞こえるが、聞いてられなかった。すぐに牛山に退かされ、今にも入ってこようとしている。まともな思考回路ではないからか、入るのに手こずっていた。

体格差が2倍も3倍もある男なんぞに勝てるわけがない。
看守がいても関係ない牛山の姿に弓弦葉は怯え、できるだけ距離をとり、相手の行動を伺う。

そして覚悟を決めた弓弦葉は、そのまま牛山に直行。

「んをォッ？！」

まだ上半身しか入ってきていない牛山の太い後ろ首に跨った。両首に縛られている縄の手錠をその首にくくらせると、一気にぎゅっと強く縛った。

『(お願いっ！こぃで気絶すて！)』

死ぬまではいかなくても、せめてこの状況から解放して欲しい思いで、手首の縄を引っ張りあげた。
だが、牛山は行き場のない手を弓弦葉の頭にがっしりと掴み、振り落とそうとしている。

その場に留まるせいでメキメキと響く頭蓋骨の音。段々痛くなり、居ても地獄、離れても地獄の窮地に陥っていた。

弓弦葉は瞬時に死を察した。