鼬の道【ゴールデンカムイ】 (ページ4)

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第肆話: 悲しきモンスターページ4

今日はやけに看守達が忙しく、動作がせかせかしていて見ていた弓弦葉はどことなく落ち着かなくなってくる。

『一体何すちゅのがすら(一体何しているのかしら)』

「なんか岩息ちゃんがまた殴り合いを始めたらしーよ」

『えっでもこったに看守が行かんくてもいいのでは？』

看守達は皆、三十年式歩兵銃と銃剣を携えていた。いくら凶悪犯あってもかなりの重装備である。

すると、白石はぷッと吹き出して手を外側に扇ぐ。

「冗談！岩息ちゃんの暴力を止められる人なんてヒグマか牛山くらいじゃないか？」

ヒグマと並べられる牛山さんとは…確かに、奥の方から何かがぱたたっと飛び散ったり、呻き声や打撃音がしたりと、様子を伺うのすらも拒みたくなる。

仕舞いには看守の中にはモヒカン刈りの上官らしき人も出動していた。そのくらい岩息とやらが何か起こすとかなり面倒なことになるらしい。

しばらくすると、周りには付き添いの看守がいなくなった囚人達が、周りを囲んでは喧嘩を激化させようと鼓舞する声があがっていた。

『おっかね…』

「俺らも見てみっか！」

『なすて？(どうして)』

白石に引き摺られ、野次馬で来ている囚人達の小さな隙間から覗く。まるで強風がゴミを吹き飛ばしていくかのように看守を蹴散らしていく。坊主頭で少女漫画ようなつぶらな瞳をした大男がいた。

「そんな、道具を使うなんて！酷いっ！！
わかってくれるって思ってたのに！」

悲しきモンスター、岩息舞治

彼は看守が持っている銃剣をあっさりほおり投げる。
武器が無くなった看守が背に腹はかえられぬ思いで素手で殴ると、見ていて気持ちがいいくらいの笑顔で叫びだす。

「もっとぉ！！もっとぉ！！んモットォ！！」

止めるどころか、更に状況が悪化している。

『帰ってい？』

「んー、もうちょっと！」

鼻を鳴らして興奮している白石を前に、ダメだこりゃと目が据わる。かといって1人で帰ろうにも、自分のいた雑居房をすっかり忘れてしまったので引くに引けない。

「テメェら散れ散れ！留め具連れてきたぞ！」

看守が囚人達の体を押して無理矢理道をこじ開ける。後から来たは岩息に負けず劣らずの巨漢だった。

「はあッ☆牛山さぁん！！」

なるほど、彼が牛山という男なのか。おでこにはんぺんみたいなコブが出っ張っているのが印象的だ。牛山は自身の服の襟に手をかけると、上半身裸の状態になった。
これを機に観客席の囚人達の気分は最高潮に達する。