第拾参話: セクハラ疑惑 ページ13
番号順で一番前の列にいるので身体検査される弓弦葉、場所が場所な為か配慮して服のままで確認してくれることになった。最初はされるがままだったが、担当の看守の触り方がどことなくいやらしい。
一瞬気のせいかとも思ったが、絶対物を入れられないであろう横腹や脇辺りをやたら滅多に触ってくるので、嫌気が差して深くため息を吐く。
隣で同時に始めた二瓶も、いつの間にか身体検査を終えて次の人がやられている。長いなと感じた違和感も、それが決め手となった。
『なー、腹減った！』
「我慢しろ」
『ちょっと長くない？なんも持ってないよ！』
時計はここにないからわからないが、太陽が南を通って西に近づいている。いつもは南がピッタリと指すと昼飯の時間なので、とっくに過ぎている。
一般男性よりも食べる弓弦葉は、お腹と背中がくっつくくらいの空腹なので多少ピリピリしている。
「口答えするな！我慢しろといったらしろ！」
『うるさいと思うなら何かくれよ。それとも、あなたの腹にかぶりついてもいいの？』
『まぁでも不味そうだからいいわ！』と声を大にして言うと、周りの囚人にウケたのか忍び笑いをする。
煽りに乗せられた看守は明らかに腹が立っているのが目に見えた。
このまま萎えただなんだで終えて貰いたい。そう思ったのもつかの間、
パンっ！
男は平手打ちをかました。そして弓弦葉の首を力強く締め始める。思わず不意を突かれたが、弓弦葉は慌てることなく相手を見つめる。
「コイツ！女だからって何でも許されるとでも思ってんのか！言っておくが…お前を殺してから犯したっていいんだぞ？」
『なんだって…？』
彼は歯をギリギリ言わせながら鼻息を荒くする。
それにカチンときた弓弦葉は、締め付けてくる手首を思いっきり噛み付いた。それは容赦なく、残った歯型から血がたらりと流れた。
後ずさる看守の顔目掛けて利き手の拳の小指側の面を打ち付ける。利き手は人差し指がないので力を込めることができず、本来なら左手の方が打撃は強いが、感情的な彼女の怒りと空腹が右手を動かした。
闇堂(懲罰房)へ連行しようとしていた看守と白石、他にも近くにいた人達がその光景を見て唖然とする。
『フン、お前みたいな粗チンこっちから願い下げだ』
「…ッ！このアマぁっ！」
沸騰した頭が殴ることによって冷静になり後先考えずに行動したことに後悔するが、既に手遅れだった。
『(あやった、騒がねように気つけぢゃーのに)』
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作者名：S | 作成日時：2024年3月20日 17時
