鼬の道【ゴールデンカムイ】 (ページ12)

今日:34 hit、昨日:15 hit、合計:2,887 hit

第拾弐話: 除雪作業ページ12

塀外が50糎の積雪だったので、元々外役の鍛治をやる代わりに除雪をすることになった。ブナ製のコシキ(全長107.5cmの現代でいうとシャベル)に雪をかき集めては歩けるくらいの道を作っていた。

他の囚人と繋がっていた鎖が解かれ、黙々と除雪作業をしていた。近くにいる二瓶と雑談に華を咲かせる。

「そういや、お前の眉毛ってなんか面白いよな」

『えっ眉毛？どうなってるの？』

「なんだ自分の姿を見たことがないのか。がっつり麻呂眉だぞ。知らないってことは…こりゃ自前か」

『へぇ…私って丸い眉なのか』

弓弦葉の眉毛は福笑いのお面「おかめ」のような丸い眉である。麻呂眉は平安時代の貴族の男女の間で流行していた。高貴に見せる工夫のひとつとして、本来の眉毛を剃り落として丸い眉をおでこに描いて、周りに表情を読み取らせないようにしていたという。

「にしても、見れば見る程面白いな」

『二瓶さんの髪型には負けると思うがね』

弓弦葉はニヤリと笑う。いつ見ても面白い髪型だ。

「ははは！俺の髪は凄いぞ〜、触ってみるか？」

『えっいいの？触る！』

二瓶は少ししゃがんで頭をこちらへ差し出す。弓弦葉は逆立った白髪混じりの髪を優しく撫でると、あまりの現実味のない髪に衝撃を受けた。髪特有の柔らかな触り心地が一切ない。

『え…硬っ……え？』

「そうだろうそうだろう」

髪の仕組みを聞こうと思って口を開けた瞬間、突然、駆け寄った複数人から、ある看守がどなりだす。

「お前らぁそこに整列しろ！並べ！」

渋々言われた通りに並ぶが、弓弦葉は内心なんで集められたのか理解できなかった。幾多の犯罪者が並ぶなか、一番前だった彼女は愕然とする。

何故か看守の後ろには白石がいた。目が合うとてへ、と舌を出して笑っている。対して弓弦葉は乾いた笑いをすることしかできない。

「おいおいまた捕まったか、白石よォ」

「いやぁ、ちょっぴり油断しちゃった☆」

『(おや？この事態に全く動じなさすぎでは？)』

隣にいる二瓶は眉一つ動かさない。白石も何食わぬ様子で気楽に話しており、私語は慎めと看守に諭されていた。一部始終を見た弓弦葉は自身の思想を疑った。

「白石由竹が模造の鍵を持っていた！至急ここにいる囚人全員に身体検査を行う！」

シライシーっ！
事の発端をキッと睨みきかす。弓弦葉が女性なのもあるが、時間は正午前、お日様がてっぺんまで昇ってきて1番暖かくても、やはり冬季。寒いもんは寒いのである。