31話 ページ34
「もう止めて！！！」
目の前の彼女の絶叫に、僕は思わず体をびくりと震わせた。
それは彼女も同じで、自分が出した言葉と声に震えていた。やっと上げてくれた顔は真っ青で、汗が滲んでいる。
「……っごめんなさい」
そう弱々しい謝罪を口から零して、Aさんは僕から逃げるように、部屋を出ていってしまった。
僕は彼女に拒絶、されたのか。
『……はは』
乾いた笑いと共に、ベッドに座り込んだ。空虚感と共に、昼間の傷も痛んでくる。
すると、控えめな足音と共に誰かが部屋に入ってきた。
ぱっと顔を上げるとそこには、ダイアーさんが立っていた。僕の社交恐怖を知ってか、一定の距離を保って話しかけてくる。
「具合はどう？」
『あ……大丈夫、です』
ダイアーさんはベッドの傍に転がっている椅子を見やると「貴方に話しておきたい事があるの」と言ってきた。
僕は人への恐怖をしまい込んで、どうぞとだけ口に出した。
「話っていうのは、Aの事なの」
そう言うダイアーさんは何処か苦しげで、思わず身構えてしまう。
その苦しげな表情のまま、静かに彼女は話し始めた。
「…あの子は、自分の過去を知られる事を恐れているの。」
「それは…」
それは、薄々分かっていた。彼女はきっと過去を消し去りたい程に、知られる事を恐れているだろう。
しかしダイアーさんは、少し考え込む仕草をした後、訂正する様にこう言い放った。
「いえ、違うわね……正しくは、本当の自分を見られる事を恐れている。」
「本当の……Aさん…？」
その言葉に、僕は少し困惑した。
何時も皆に笑顔で、明るい彼女は本当の彼女ではないのか…？いや、それは無い。無いと信じたい。
ならば、彼女はその明るさの影に一体何を隠しているって言うのだろう。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 402人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「第五人格」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
梨々華(プロフ) - ナ子さん» コメントありがとうございます！嬉しいお言葉(無事昇天) (2019年3月28日 23時) (
レス) id: 7e65e4ae7c (このIDを非表示/違反報告)
ナ子 - え、なに、展開がすごく気になるんですけど…。（死にかけ） (2019年3月27日 9時) (レス) id: 848e96a0c3 (このIDを非表示/違反報告)
梨々華(プロフ) - 猫夜桜((シラキさん» ありがたきお言葉ありがとうございまぁぁぁぁぁぁす！！！！これからの展開にご期待くださァァ(うるさい) (2019年3月14日 19時) (レス) id: 7e65e4ae7c (このIDを非表示/違反報告)
猫夜桜((シラキ(プロフ) - うおあぁああ！？展開がァアァ！Fooooooo！！！この小説すっごい好きです！これからも頑張ってください！！ (2019年3月14日 3時) (レス) id: 4588ab3ba5 (このIDを非表示/違反報告)
梨々華(プロフ) - カレンダー(2017/10)やばさん» おぁぁぁぁ...嬉しいお言葉ありがとうございます！これからもシリアス投下して行きたいと思います笑 (2019年3月9日 13時) (レス) id: 7e65e4ae7c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：梨々華 | 作成日時：2019年2月16日 16時
