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プロローグ (リメイク) ページ1

草ヶ野Aはほとんどの時間目を瞑っている。



何故か?



それは彼女が生まれつき目が悪いからだ。



彼女の父も生まれつき目が不自由であったからして、彼女は自分の両親や、同級生や住んでいる山の景色ですら見えないと思っていた。




だが、最近Aは“眼鏡”なるものを買った。



なんと、失明などをしていない限り

目がどんなに悪くてもはっきりと物が見えるのである。


時代と職人の賜物(たまもの)である。



彼女は喜んだ。



白く霞んでいた景色がよく見えた。


色彩豊かな世界を知った。


見えなかった物が一気に見えるようになり、
彼女は一瞬の内に多くを知ってしまった。


それが快感であった。


頭の出来が悪い彼女はこのことからなかった知識欲を抑えられなくなった。



両親の仕事を手伝うだけの毎日が180度変わる。



それまで彼女は日本語と農業の知識、両親の声、山の土の感触しか知らなかった。




情報を得るために一番使うのは目である。



それを解放した後はもう止まらなかった。



母親の母国語はもちろんこの世界の全ての言語を本で学び、


その野菜に適した肥料や土、水の分量などを教わり、


両親の顔、種族、馴れ初めを真面目に聞き、
(それまでも聞いたことはあったがよく理解できなかった)

父が日本料理が得意でお面職人だったのを知り、
母が獰猛で意外と歌ウマなのを知った。


山の植物、動物。
どの植物がどのように育ち何に使えるか。
どの動物がどのように育ちどのような習性があるのかなどを知った。



なにぶん彼女には両親以外の知り合いがいなかっため情報源の多くは両親と本だけだ。



全ての知識をそこから学んだ。



いつしかその情報源がなくなり、彼女の知識はそこで途絶えた。




自分の行動範囲の全てを知っている彼女は再び目を瞑った。









しかし、時が流れ、Aは新たに知識を入れられる場所に行くことになる。



多くの者に出会い、知らない場所に行き、知らない事を知るようになる。





彼女は眼鏡のある今もまだまだ目を瞑る。



必要最低限、目を開ける事はない。




何故なら彼女はあまりにも長く目を閉じ続けてしまったからだ。




現在、彼女は常に目を開けられるよう奮闘している。

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とろける林檎(プロフ) - 試したんですか!?私も食べようかな… (2021年6月20日 0時) (レス) id: 1d1d599dda (このIDを非表示/違反報告)
Rin'Rin' - 豆腐のやつ、意外とあってたかもしれない... (2020年10月2日 15時) (レス) id: 5db59b25a6 (このIDを非表示/違反報告)
とろける林檎(プロフ) - ありがとうッッッッッッ!!! (2020年9月21日 17時) (レス) id: 1d1d599dda (このIDを非表示/違反報告)
天の河 - かわよ。よき。わー。好きッッッッッッ!!! (2020年9月21日 16時) (レス) id: cb69af0fdb (このIDを非表示/違反報告)
とろける林檎(プロフ) - リョーカイです! (2020年9月20日 16時) (レス) id: 1d1d599dda (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:とろける林檎 | 作成日時:2020年7月1日 15時

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