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『やぶ、くん…？』
「俺は ずっと、お前が こわかった。
俺の知らない間に 伊野尾と出逢って、少しづつ、伊野尾を 自分の色に染めていくお前が…」
『へぇ…』
「大学に進学しても、就職しても、俺が 伊野尾と恋人になっても、いつも 伊野尾のそばに お前がいる気がして、こわかった。
お前が、どうして そんなに 伊野尾に執着するのか分からなくて、ずっと、ずっと、こわかったんだ…」
くるしそうに
ぽろぽろと 言葉と感情を吐き出す 薮君。
その姿は 帝王様なんかではなく
恋に溺れ、くるしむ ただの男で、
『どうしてか なんて決まってんじゃん。
伊野尾くんのこと、愛してるからだよ』
気がつけば
俺も "ナンバーワンホスト、ケイ"の肩書きを 忘れ、
恋に溺れ、くるしむ ただの男になっていた。
「いつ出逢ったんだ、伊野尾に。あいつの 何をそんなに 愛してるんだ？」
『…俺ねぇ、薮君が 大嫌いなんだ』
「な、に…」
『薮君が、伊野尾くんの相手だから』
「、」
『だからね、教えてあげないよ。
俺と伊野尾くんとの 大切な想い出も。俺が 伊野尾くんに惚れた理由も。俺が どれほど伊野尾くんを 愛してるかも。
薮君なんかには、一生』
くすり、笑えば
薮君の 瞳が揺れ、
我ながら、性格が悪いな と思った。
だけど 恋に溺れた人間なんて そんなもんだ。
恋する人の相手は、自分じゃないと 納得いかない。
だから こうやって、醜い争いをするんだ。
どこぞの メロドラマのように。
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作者名：本田
| 作成日時：2017年10月9日 1時
