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『あぁん…やぶ、きもちいよぉ…』
そんな俺を、瞳を細めながら見つめる薮。
その表情は 俺の滑稽さを愛しく思ってくれている しるしで、
「っく、締めんなよ…」
『だって、うれしい…』
うれしいと思わずにはいられない。
「かわいいヤツ」
あ、おでこ
そう思ったのと同時に、コツンと くっつけられたおでこ。
なんでも知ってるよ。薮の癖も、薮の考えてることも。
だてに何年も 一緒にいるわけじゃない。
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中学の時に知り合った俺たち。
すごく気が合って、波長が合って、一緒にいることが当たり前で、
『これって、ソウルメイトってやつじゃない?』
と、薮と興奮しながら 語り合っていた。
それからも、高校・大学と 一緒なトコロへ進み、
あらゆる場面でソウルメイト感を発揮しながら、
俺たちは 二人でいるのが当たり前、と 周りにも、互いのこころにも刷り込んでいった。
そして その関係が変わったのは、就職活動の時。
薮のアパートで、『やぶと就職先が離れちゃったら、めんどくさそー』と 愚痴をたれていた俺に、
「恋人にならないか」と、薮は告げ、
俺は何も言わず、ただ 薮の手を握った。
「俺たち、たぶん こうなる運命だったんだろうな」
あの時、薮が つぶやいたクサすぎるセリフは、いまでも忘れられない。
俺だってそう思ってたよ、薮。
それがどうして、こうなったんだろう。
悪いのは誰?
男で生まれた俺?
社長の息子として生まれたやぶ?
それとも、俺たちの間に割り込んだ あの女?
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作者名:本田 | 作成日時:2017年10月9日 1時