ネオメロドラマティック(yb×in) (ページ7)

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『もしもし…たかき？』

「伊野尾くん、どうしたの？」

『今、どこ？』

「家だよ。もうすぐ店行くけど」

『ふーん』

「なに？ふーん、って」

胸に響きわたる低い声に、しだいに治まってきた手の震え。

うん。この声、落ち着く。

薮とは違う、同じ血が流れているような、切っても切れない関係の彼。

わがまま言っても、罵っても、離れていかない彼は、

俺の心の中をすべて知っている、唯一の人間。

『あの女、たかきのこと追いかけて出てったみたい。離婚届置いて』

「あー、だからこんなに着信入ってんだ」

『電話、出てないの？』

「出ないよ。好きだの、愛してるだの、会いたい会いたい、ってうるさいんだから」

『うざ…』

「あー、店行けないなぁー。店長に電話しないとなぁー。困ったなぁー」

と、陽気な声で嘆く高木は矛盾だらけの男で、

『はは、たかきむちゃくちゃじゃん』

その矛盾が、いつも俺を笑顔にしてくれる。

俺の本音を引き出してくれる。

「えぇ？ムチャクチャなのは伊野尾くんでしょ？半年以内にあの女オトせ、なんて言ってさぁ。
こわかったんだよ？"早くしろ、早くしろ"って伊野尾くんの圧力」

『仕方ないじゃん。子供なんか出来たら、面倒なんだから』

「うわ、そーゆーことかぁ。愛人怖ぇ!!」

『愛人じゃないし。俺はずーっと、やぶの恋人なの。あの女が割り込んできただけ』

"愛人"

きっと世間から見たら、俺はそのポジションだろう。

メロドラマに出てくる、幸せな家庭をぶち壊すやっかいでトチ狂った存在。

失礼な話だ。

俺の気持ちは、薮が結婚する前と何ひとつ変わってないのに。

あの頃は、"恋人"だったのに。

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