幸せになりたいだけなのに (ページ3)

今日:4 hit、昨日:0 hit、合計:5,241 hit

2、ページ3

鯉登は上手く喋れないのかもごもごいいながら言葉足らず喋っていた

その話とは、私の親族…………私の親戚、民が手のひら返しで私に媚びを売ろうとしているらしい
理由としてはきっとあれ(・・)だろう

本当にクソ野郎だ

『その話はどこで仕入れた』

「とある商人からだ」

月島殿曰く、買い物をしに町を歩いていたところ色々な者が噂していたらしい

『今更、手のひら返しとは…………ふっ、哀れだな』

「それでだ！俺になにか力になれることはないか？なんでもいい！友人のためになにかしたいんだ！」

鯉登は真っ直ぐな目で私に訴えた

だが、例え私の大事な友人だとしても私だけの問題に関わらせる訳にはいかない

『その気持ちは嬉しいが、今回ばかりは手を引いてくれ。』

「何故だ！」

『これは私の…………か、家族の問題だ。』

家族……

嗚呼、この言葉にこれほど嫌気がさすとはな…………

「俺もお前の力になりたいんだ……お願いだ、力になりたい。」

『私だけの問題だ。すまないな。』

「俺が迷惑か？邪魔か？」

鯉登は今にも泣きそうな声で問いかけた

もちろん迷惑とも邪魔ともこの生涯鯉登にそんな感情を抱いたことは無い

『迷惑でも邪魔でもない。逆なんだ。私はお前に迷惑をかけたくない。お前を巻き込ませたくないんだよ。分かってくれ。』

「う、うぐっ……(泣」

『相変わらず昔と変わらんな、鯉登は…………』

私は苦笑し鯉登の頭を撫でた

すると、鯉登は頬を膨らまし「俺はもう子供じゃない｣と言いたそうな顔をした

『鯉登のその優しい気持ちだけ受け取っておく。私の親族が仕掛けてきたなら私もそれに乗っかってやる。勝って帰ってくるから待っていろ……！』ﾆｶｯ

「うん……」

「Aさん、いつ頃出られるのですか？」

『色々用意する必要があるな……3日後になる。』

「それなら、鯉登さんをここに泊めてもよろしいでしょうか？」

『え、あ……構わないが…………。』

月島殿が表情を変えず問いかけてきた

別に友人を断る理由がない
それに力を貸したいと泣きながら頼まれた友人を突き放したりなんかしたくない

『鯉登、これから3日間ひとつ屋根の下だが、よろしくな。』

「お、おう……」

「私は仕事があるので鯉登さんをよろしくお願いします。」

『あぁ、任せておけ。』

月島殿は話終わると帽子をかぶり出て行った

『ふふっ、まさか鯉登とひとつ屋根の下とはな…………』ﾁﾗｯ

チラッと鯉登を見ると蒸発していた