漆 ページ8
私の生涯で二度目の都。
華やかな店が多く立ち並ぶ。
『旦那様、旦那様！』
｢･･･急かさなくてもーー｣
『あ、角ないんですね？』
いつの間にか角と、手が普通の人の様になっている。化ける時はあの狐の様に煙が出るものかと思ったのに。
一月、ずっと尖った爪を見て、角を見ていたせいなのか違和感のある旦那様。
｢流石に･･･あのままだと駄目だろ？｣
『そう、ですけど･･･』
｢？｣
あっちの方が落ち着く。なんて私は･･･一体どうしたのだろうか、
むむっと眉間に皺を寄せ、旦那様の背後に回ると背中を｢行きましょう！｣と押した。
旦那様は元々何か、用事があるようでは無かった。
丸一日私が引っ張ってははしゃいで、お団子を食べたり、時々なんてことの無い物を見て笑ったりしていた気がした。
『旦那様はここに用があって来たのですよね？』
｢まぁ･･･そうだな、｣
『ならば用事を優先してください。私が旦那様の邪魔になっているのは嫌です。』
気にはなっていた、なっていてあえて黙っていた。
何も言わない旦那様だからもしかしたら私に合わせてくれているんだと、
元をたどれば都に用があって、そのついで程度に私を誘ったのだ思う。
｢･･･そうだな、悪い。｣
『いいえ、分かっていて付き合わせてしまってごめんなさい。私はあの、柳の元で待っています。』
川沿いに植わっている柳、その中でも大きな物を指を指す。その手前にはお茶屋もありそこに座っているよ、と微笑んでみせる。
旦那様は不安げに眉を少し下げる。
｢何かあればすぐに来る。｣
触れられる頬、その手からは少しばかり甘い匂いがした。
旦那様の背を見送り、お茶屋の席に座る。
なぜそんなに旦那様は不安がるのだろうか？私は女にしては色気や、愛らしさなど持ち合わせていない。
華やかな衣を身に纏い、綺麗な簪を揺らし、口には紅を塗って清楚な立ち振る舞いをする。それが普通というものだと思う。
(それなのに、髪は結わないし着物も華やかななものは選ばないし･･･紅もした事がないなぁ、)
山奥の村でも綺麗な女はとても綺麗だった。
旦那様は私の何を好いて共に居ようと思ったのだろうか？もしものための食料？それならば納得しなくもない。
(綺麗な着物沢山あった、簪も･･･)
旦那様の用意してくれた物にはそういった物があった。
明日にでも着てみようかな、そんなことを思いながら旦那様を待った。
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鈴音(プロフ) - 本当に泣きました。語彙力があってうらやましい限りです。これからも頑張ってください。これからも読みに来ます。 (2018年8月22日 17時) (
レス) id: ec91683ef5 (このIDを非表示/違反報告)
秋雨秦(プロフ) - 苺デラックスさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけて良かったです。爆豪の話口調や性格は探り探りなので、良かったです。最後までありがとうございます。 (2018年3月30日 6時) (レス) id: 83d660fda4 (このIDを非表示/違反報告)
秋雨秦(プロフ) - うさたまさん» 返信遅くなってごめんなさい！コメントありがとうございます。これかも作品共々よろしくお願いします。 (2018年3月30日 6時) (レス) id: 83d660fda4 (このIDを非表示/違反報告)
苺デラックス - お疲れ様でした。私はこれを読んで号泣してティッシュの箱を1箱空にしてしまいました笑本当に泣けます。勝己の幸せになれやと、全部捨てて俺といろよがなくポイントでした。素晴らしい小説だと思います！本当にお疲れ様でした！ (2018年3月30日 0時) (レス) id: e851a42e9b (このIDを非表示/違反報告)
うさたま(プロフ) - 心が浄化されましたありがとうございますこれからも頑張って下さい！！ (2018年3月25日 19時) (レス) id: 2ffea79b62 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：秋雨秦 | 作成日時：2017年10月13日 20時
