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17時、延びる影の黒。4*sk ページ37

ベッドでしっかり阿部ちゃんにくっついて眠る康二。

過去を思い出してからずっと泣いてたから、瞼が少し赤く腫れてる。

その髪を撫でながらやさしく微笑む阿部ちゃんは、自分が睡眠薬で眠らされてる間に売られようとしていたなんて知らない。

絶対胸糞悪い話だとは思ってたけど、やっぱりあの女が絡むと俺の心臓はカッと煮立つ。




「…珍しいね。ちゃんとひとりで寝れるようになったのに」


愛おしそうにちいさな体を抱きしめる阿部ちゃんが、たまらなく好きで。

思わず泣きそうになるのをグッと堪えながら、ふたりの上にやわらかい毛布を掛けた。


「ありがとうございます……佐久間さん?」


毛布を掛けたついでに、ふたりまとめて抱きしめる。

今度こそ絶対、俺が守るんだと誓うために。


「…苦しい、どうしたんですか?」

「……ん、ごめんね。なんでもない」

「……?そ、ですか」






きっとこの先も康二は、サングラスの男性を見たら警戒し続けるんだろう。

それがいつまで続くのかはわからないけど、阿部ちゃんにはこんなこと言えないし、言いたくない。

たぶんそれは康二も同じだし、いよいよ本当に保母さんを警察に突き出そうかと考える。



(…大人がやる行動じゃないだろ、ありえねぇもん…)



俺ひとりで考えても無駄だとわかってたけど、さすがにこれは照たちにも話せなかった。

みんなそれぞれ家庭があるし、こんな重暗い話で嫌な気分にさせたくない。





だからせめて、








「お花見行くぞ〜!!花粉症に負けるな〜!!」

「をーっ!」

「一応ウエットティッシュと、箱ティッシュは持っていきますね」




楽しい思い出で徐々に上書きできるように。




「あべちゃん、このおにぎり、なにはいってるん?」

「それは明太子だね。辛いから康二は食べれないかも」

「あっ、じゃあこっちツナマヨだから康二食べなよ!」

「たべかけやんけ!めっちゃはがたついてるやん!」





ピンク色の花吹雪で、ふたりの黒い思い出なんか吹き飛んでしまえばいい。





「やっぱり、たまごやきはあべちゃんや!」

「阿部ちゃんお弁当ありがとうね。お花見はやっぱり美味しいお弁当あってこそだ〜!」

「ありがとうございます。…あっ、康二こぼしてるよ」



いそいそと康二の食べこぼしを拭く阿部ちゃんの髪に、1枚の花びらが遊びに来た。

微笑ましい光景を眺めていると、暖かい春の風が前髪を撫で、心地良さに目を細める。



(…あったけぇな。もう、春か…)

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谷森山(プロフ) - まりそうさん» コメントありがとうございます!あんまり楽しいお話ではない物が続いて申し訳ありません🥲今後のお話は楽しさだけでない物も多くなってきますので、御理解いただけたら幸いです。よろしくお願いいたします🥺 (4月17日 0時) (レス) id: 0b5df8b91d (このIDを非表示/違反報告)
まりそう - いつも楽しく読ませていただいてます。とっても癒されてます。更新されるお話を楽しみにしています。3家族のぼのぼのとしたにぎやかな楽しいあたたかいお話しがみたいです。 (4月14日 16時) (レス) id: 3b49c20ebb (このIDを非表示/違反報告)
谷森山(プロフ) - Blueい。さん» コメントありがとうございます!平仮名ばかりで読みづらかったと思いますが、感動していただけて嬉しい限りです🥺✨今後もよろしくお願いいたします🥰 (2月17日 6時) (レス) id: 0b5df8b91d (このIDを非表示/違反報告)
谷森山(プロフ) - まりそうさん» コメントありがとうございます!お気に召していただけて何よりです🥰結婚式のお話は、構成上割と先になる予定です。お待たせして申し訳ありません💦御理解いただけますと幸いです🙏 (2月17日 6時) (レス) id: 0b5df8b91d (このIDを非表示/違反報告)
Blueい。(プロフ) - 初めてコメントさせていただきます!蓮くんの逆サプライズが本当にいいお話すぎてコメントさせていただきました。小説を読んでて初めて泣きました…!笑 これからも応援してます!! (2月16日 23時) (レス) @page28 id: 173db89271 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:谷森山 | 作成日時:2024年1月15日 10時

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