花冠にはすずらんを【雪男】

両手のちいさなぬくもりで。3*ab ページ32

佐久間さんと宮舘さんはちょうどオーディションが終わったらしく、すぐ向かうと言ってくれた。

渡辺さんは電話が繋がらなくて、たぶんまだ仕事中らしい。

帰路は岩本さんに任せて、広い公園を深澤さんと2手に分かれて探すことにした。

康二には絶対手を離さないよう何度も言って聞かせ、ほとんど誰もいない公園を駆け回った。




「…お兄さん、もしかして誰かお探しか？」


竹箒で落ち葉を掃除していたおじさんが、見かねて声をかけてくれた。

事情を説明すると、どうやら公園にはぽつぽつと防犯カメラがあるらしく、管理室まで案内してくれるみたい。

管理室の警備さんにも事情を話すと、カメラの映像が見れるところまで入れてくれた。

しばらく時間を巻き戻してもらうと、



「あっ！れんや！！」



蓮くんの映る画面があった。

早送りしながらカメラを追い、蓮くんが誰かを追いかけてることに気付く。

少しの音声なら拾ってくれるらしいから、1度映像を止めてもらうことにした。







『…て、まって！！』

『あ？翔太のガキじゃん』


映像に映る男性は、あの時蓮くんの隣に座った男性。…なんか、テレビで見たことある。

渡辺さんの名前が出てくるってことは知り合いなのかな？



『すぷりんぐ！さいごまで、ヒーローみてって！』

『はぁ？うっせーな、翔太が出てるかもと思って来ただけだよ。あいつ連絡無視するし…』

『んぅ…ヒーロー、みてって？ターコイズもいるよ！』

『……あのなぁ、お前にはまだわかんねぇと思うけど、ショーに出てるターコイズは本物じゃねぇの』




(…このひと、子供の夢を壊すようなことを…)



『いい機会だから教えてやるよ』

『やだ！ヒーロー、かっこいいもん！みて！』

『お前の大好きなスノーレッドとターコイズはさぁ、』

『みてってよぉ！』


『宮舘 涼太と渡辺 翔太なんだよ！』





『そんなのわかってるもん！！！！！』








「…ぇ、」


思わず声が漏れてしまった。

ぽろぽろ涙を零しながら、今日ずっと握りしめていたスノーレッドのフィギュアを抱きしめる蓮くん。




『だって、おんぼろひろば、レッドも、ターコイズも、みんな、ほんものだったもん！ぎゅってしてくれたの、ままとぱぱだったもん！！』

『…おんぼろ？何の話だ？』




あのちいさなヒーローショーの後、スーツを着たまま蓮くんを抱きしめた渡辺さん、その後ろから抱きしめた宮舘さん。

…蓮くんには、ちゃんとふたりの愛が届いてたんだ。

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