花冠にはすずらんを【雪男】

レンズに映す20時。4*nb ページ25

結局ほとんどのグリンピースを涼太の皿へ放り込んだ。

ふわふわ卵で綺麗に包んでくれたところ申し訳ないが、チキンライスをほじくり返した皿の上は見事に汚い。


「…翔太が食べればいいじゃん」

「ペペロンチーノにグリンピースは合わないだろ」

「カルボナーラにも合わないだろ」



グリンピースが無ければ、モリモリ食べてくれる蓮。

あと3口ぐらいかなってところで、じっと俺を見つめてきた。


「しょっぴぃ、あーんして！」

「えぇ？ちょっと待って、まだこの辺グリンピース避けてないから」

「…いっこ、たべる。あーんして」


ぱかっと口を開けながら、覚悟を決めたみたいにぎゅっと目を瞑っている。

…なんて偉い子。涼太が口元を抑えながら感動するのも無理はない。

せめてもの優しさとして、なるべく卵の分厚いところでチキンライス(グリンピース1個入)を包んだ。



「はい、あーん」



おおきく開かれた口に、スプーンをそっと運ぶ。

固く目を閉じたまま咀嚼した蓮は、ごっくんと飲み込んで涼太に笑いかけた。


「ぱぱ、たべた！」

「…頑張ったね。偉いよ、蓮」

「ぇへへっ」


こうやって子供って成長していくんだな。泣きそう。

まだ3歳なんだから、好き嫌いは多くても別に構わないと思う。

けど多分、味の変わったカルボナーラをもそもそ食べる涼太に、これ以上グリンピースを食べさせたくないと思ったのかも。


(…ほんと、やさしい子)


まるっこい頭を撫でると照れくさそうに笑う。

その様子を、涼太は俺のカメラでこっそり撮っていた。










「また撮ってる。メモリーカードすぐいっぱいになるよ」


帰宅後、お風呂に入ったらすぐに寝てしまった蓮をカメラに収めていたら、背中から笑い声が聞こえた。

髪をタオルで払いながら、俺の撮ったデータを覗き込んでくる。

お風呂上がりだから、手がぽかぽかあったかい。


「今度現像して、アルバム作ろうかなって。…3歳からしか無いけど、こいつが大人になったとき、見返して笑ってくれたらいいなぁって」

「……いいね。翔太のそういうとこ、だいすきだよ」


あたたかい唇が、そっと頬に触れる。



(…そういえば、まだ3人で撮ってなかったな)



愛おしそうに蓮の頬にもキスを落とす涼太。

なら反対側のほっぺた、もらっちゃお。



蓮を挟むようにキスをする様子を、頑張って撮った。


「…ふふっ」


ちょっとブレたけど、初めての家族写真。

俺たち宮舘家は、たぶんこのぐらいでちょうどいい。

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