イヌホオズキの嘲笑。4*sk ページ17
「今日は泊まらせた方がいいね」
白髪混じりのお医者さんが、白いベッドで眠る阿部ちゃんを見て呟いた。
外傷はそんなに深くないみたいだけど、あれから阿部ちゃんは目を覚まさない。
きっとメンタルの傷が相当深いんだと思う。
時折寝息が聞こえるから、たぶん起こそうとすれば目を開けてくれるとは思うんだけど、俺も康二も起こしたくなかった。
休める時に休んでほしい。たくさん寝て、少しでも回復してほしい。
「…わかりました。よろしくお願いします」
面会時間が終わるギリギリまで、俺たちは阿部ちゃんの手を握って離さなかった。
康二だって怖かったはずなのに、泣きそうになりながらもずっと、両手で阿部ちゃんの右手を握りしめていた。
「あべちゃん、だいじょうぶやで。…だいじょうぶやからな、っ」
一生懸命話しかける康二の姿に、思わず俺まで視界が滲む。
面会時間終了の院内放送が流れても、康二はしばらく手を離さずに阿部ちゃんの顔を見ていた。
「…康二、帰るよ。また明日迎えに来よう」
「………」
何も言わずにそっと離れた手は、寂しそうに俺の手を握る。
病室を出ても何度も振り返る康二の手を、俺も強く握り返した。
「あした、あべちゃんかえってこれるん？」
「ん、大丈夫だよ。寝てるだけみたいだし」
「ほな、おたんじょぉびは、みんなでおいわいできるやんな？」
「……誕生日？」
「あべちゃん、たんじょぉびやん」
「…それは何月何日のことでしょうか！？！！？」
「さっくん、しらんかったん！？」
「知らんかったよ！？」
「11がつ27にちやで！」
「すぐじゃん！こうしちゃ居られねぇ！康二、急いで阿部ちゃん生誕祭の準備だっ！」
「ぁいっ！」
今日1日で、だいぶ思い知った気がする。
俺、ほんとに阿部ちゃんのこと何も知らないんだなって。
誕生日も血液型も、そういえばバイト先が何処なのかも知らない。
(…阿部ちゃんが施設で、どれだけ苦しかったのかも)
理解してたつもりだった。
でも実際保母さんに会っただけで、あんなに怯えて泣いてしまう康二。
その康二の盾になりながら、3年もの間…想像を絶する苦しみだったと思う。
俺は、ふたりのこと何も理解できてない。
ならばせめて、少しでも俺といる時間を楽しいと感じて欲しい。
少しずつふたりが、自分のことを話してくれるまで。
俺のことを、本当の家族だと思ってくれるまで。
「……あっ！もしもし、涼太！？緊急事態です！！」
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谷森山(プロフ) - サクラサクさん» コメントありがとうございます！楽しんでいただけてるようで何よりです😇❤️現在続編を制作中ですので、少々お待ちいただけますと幸いです！よろしくお願いいたします🥺✨ (1月14日 22時) (
レス) id: 0b5df8b91d (このIDを非表示/違反報告)
サクラサク(プロフ) - 初めまして 世界観に入り込んで泣きながら読みました。みんなが幸せになりますように！続きまってます。 (1月14日 1時) (レス) @page50 id: 8091bfce66 (このIDを非表示/違反報告)
谷森山(プロフ) - ハルさん» コメントありがとうございます！子供たちの幸せを願っていただき嬉しいです( ;ᯅ; )❤️つらいことも家族で一緒に乗り越えて、逞しくやさしい子に育ってくれるといいですよね( ¨̮ )♡ (12月21日 10時) (レス) id: 0b5df8b91d (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - 良かった、、、、もう入り込みすぎて 子供たちに何かあったら、と心臓痛くなる毎日です(泣) あぁどうか幸せになりますように (12月20日 20時) (レス) @page35 id: af4e907359 (このIDを非表示/違反報告)
谷森山(プロフ) - にこさん» コメントありがとうございます！宮舘家を見守ってくださり嬉しいですˊᵕˋたっぷり愛情注いでくれると思いますので、今後もお付き合いくださると幸いです( ¨̮ )︎︎♡ (11月22日 10時) (レス) id: 0b5df8b91d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：谷森山
| 作成日時：2023年11月1日 1時
