検索窓
今日:5 hit、昨日:6 hit、合計:45,852 hit

10*S ページ10

突然、住宅地の中にある一軒の家が光り出す。

目を開けてられない程の光が三秒ほど。

それが収まると、家の窓からひとりの女性が顔を覗かせた。



「…あなた!」

「あ、あぁ…」


八百屋の店主は信じられないといった表情で、ぼろぼろと涙をこぼす。

どうやら、寝たきりだと言っていた奥さんらしい。

元気に窓を開けて手を振る奥さんを見て、店主は宮殿に立つ男に向かって泣き叫んだ。




「王!この御恩は一生をかけて…!!」




王、と呼ばれた男は優しく微笑み、何度も頷いた。



「なんの。お前たちが幸せでいてくれること、それが何よりの恩返しだ」



愛ある言葉に、街人たちは大きな歓声を上げた。

国王万歳、我らが王よ、生涯あなたに従います、などなど。




「…す、げ。なんだよこれ…」

「噂には聞いてたけど、ここの王は一日にひとつ、街人の願いを叶えてくれるんだって。もちろん願いはひとり一回だけど」


ガヤさんと宏光が、歓声から逃げるように路地裏へ入り込む。

俺はしばらく呆然としていて、宏光にちょんとつつかれてハッとした。



「千賀、大丈夫か?」

「あ、うん、ごめん」

「健永の使う魔法って、あんな感じなの?」


あんな感じ、というより…





「さっきの魔法は、玉の力だよ。あの王様、きっと裏で玉を操ってる」




見覚えのある金色の光は、玉の色。

人間では到底叶えられないような願いを叶え、あたかも自分のおかげだと思わせている王様。

どんな手を使ってるのかわからないが、きっと反則ギリギリの方法で玉に街人の願いを叶えさせてる。



「…それって……」

「この街のひとたちは、騙されてるってことかよ?」

「うん、ほぼ間違いなく」

「なんだよそれ、意味わかんね…」


宏光が眉間に皺を寄せた時、ガヤさんが勢いよく走り出した。


「えっ!?」

「あっははは!いーこと聞いちゃったー!」

「おま、フジガヤか!」


フジガヤは賑やかな街へ飛び出すと、未だに歓声を浴びる王へ向けて力いっぱい叫び出す。







「やーーい!イカサマ国王ーー!魔法のマの字も使えないくせにー!威張るなバァーーーカ!!」







しん、と聞こえてきそうな程の静寂。





「…ふ、フジガヤ!!」

「捕らえろ!!」



宏光がフジガヤの腕を掴んだと同時に、街人たちは怒りを露わにし、力任せにふたりを拘束し始めた。

フジガヤは心底楽しそうに笑った後、ガクリと力を落とす。

次に顔を上げたのは、顔面蒼白のガヤさんだった。

11*S→←9*S



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (125 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
324人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

桐山ななみ(プロフ) - わったーの悪役最高♡♡♡♡♡(*´ω`)キタヤンがマジでどうなるか気になる汗ニカ千も汗すごーく続きが気になります!!無理しなくていいので頑張ってください!! (3月12日 6時) (レス) @page20 id: c060af3ed8 (このIDを非表示/違反報告)
谷森山(プロフ) - キスマイさん» お久しぶりです!色々お話がある中で新たに連載すみません(._.)丁寧に作っていきたいと思ってますので、ぜひ最後までお付き合いくださればと思います!よろしくお願いします(*^^*) (2018年8月10日 4時) (レス) id: 9b9168131d (このIDを非表示/違反報告)
キスマイ(プロフ) - こんばんは。久しぶりに谷森山さんのお話を読めて嬉しいです。千ちゃんと宏光の優しいやりとりに胸がぎゅっとなりました。宏光の願い事がとても気になります。ここからどうニカ千が出会うのか今後も楽しみです。これからも応援しています。 (2018年7月24日 23時) (レス) id: 64045badf0 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:谷森山 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2018年6月6日 12時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。