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5*S ページ5

辿り着いたのは、宏光の家と似たような外観の家。

まぁ、このへんの家はだいたい木造の煙突があるような家ばかりだから、どれも似てはいるんだけど。

チラリと宏光を見やると、どうやら少し緊張しているようだった。

喉がちいさく唾液を飲む音が、耳元で聞こえた。

俺が見ているのに気付いたのか、宏光は俺を肩から掌に移動させると微笑んだ。



「ここだよ。俺の…いちばんの願いがある場所」


ゆっくりとその扉を開けた宏光。

中からはふわりと花の香りがして、玄関には鮮やかな花が花瓶に生けてあるのが見えた。


治す、っていうのに反応してたから…病気の人がいるんだろうな。



「…藤ヶ谷?いるか?」


震えた声でリビングのドアを開けようとする宏光。

すると突然、そのドアが勢いよく開いた。


「キタヤマ〜!!」

「うぉっ!?」


飛び出してきたその人は、宏光の首元に思い切り抱きついた。

…飛びつく、の方がしっくり来るかも。


「待ってたよ〜!昨日来てくれるって言ってたのに、来ないんだもん〜!」

「ちょ、わかったわかった。ごめんって」


宏光は俺が潰されないように片手を広げながら、もう片方の手でその人の背中をトントンと叩く。

なんか…病気の人がいるんだと思ってた俺が既に懐かしい。

ものすごく元気な、明るい男の人だ。

あと、恐ろしく顔立ちが整っている…。


「フジガヤ、俺が会いに来たのは藤ヶ谷なんだ。代わってくれ」

「え〜!?俺だってキタヤマが大好きなのに〜!!」


宏光は少し悲しそうな顔をしながら、俺を見つめた。



「…千賀、俺の願いはこれだよ」




聞き返そうと思った瞬間、フジガヤと呼ばれた男の力ががくりと抜けた。

宏光はそれを慌てて支えると、リビングに入って小振りなソファにそっと座らせる。


「…ん……北山?」

「藤ヶ谷…」


よく見るとフジガヤの腕や足は多数の傷があって、痣や切り傷、引っ掻いたような痕もあった。

先程とは打って変わって穏やかになったフジガヤは、目を開けると宏光を見上げて不安そうな顔をした。


「ご、ごめん北山。俺、またお前に何か…」

「いや、大丈夫。なんもなかったよ」

「…ほんとに?」

「おう」


フジガヤがホッとした表情を見せると、宏光も少しだけ穏やかな表情を見せた。


「…千賀、なんとなくわかったと思うんだけど…」


先程との性格の違い、体の生傷、怯えたような表情。


…そういうことか。


「藤ヶ谷の中にいるフジガヤを、消してほしいんだ」

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桐山ななみ(プロフ) - わったーの悪役最高♡♡♡♡♡(*´ω`)キタヤンがマジでどうなるか気になる汗ニカ千も汗すごーく続きが気になります!!無理しなくていいので頑張ってください!! (3月12日 6時) (レス) @page20 id: c060af3ed8 (このIDを非表示/違反報告)
谷森山(プロフ) - キスマイさん» お久しぶりです!色々お話がある中で新たに連載すみません(._.)丁寧に作っていきたいと思ってますので、ぜひ最後までお付き合いくださればと思います!よろしくお願いします(*^^*) (2018年8月10日 4時) (レス) id: 9b9168131d (このIDを非表示/違反報告)
キスマイ(プロフ) - こんばんは。久しぶりに谷森山さんのお話を読めて嬉しいです。千ちゃんと宏光の優しいやりとりに胸がぎゅっとなりました。宏光の願い事がとても気になります。ここからどうニカ千が出会うのか今後も楽しみです。これからも応援しています。 (2018年7月24日 23時) (レス) id: 64045badf0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:谷森山 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2018年6月6日 12時

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