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4*S ページ4

朝食を急いで食べ終えた俺たち。

俺が本体に戻ると、動き出した小さなマスコットを見て宏光は少しだけ目を丸くした。


「信じてなかったわけじゃねぇけど、本当に妖精なんだな…」

「まぁね!こっちの体の方が動きやすくて、俺は楽ちんだよ」

「じゃあ、なんで今まで人間のナリしてたんだ?」

「……………うん、まぁ、色々」

「……ふぅん」


相変わらず深く詮索しない宏光の性格が、俺は好きだ。



宏光の家を出て、木漏れ日の心地良い木々の道を歩く。

俺は宏光の肩に乗せてもらって、少しだけ早足なその横顔を覗いていた。


「…なぁ、そういえばさ」

「ん?」


途中、宏光はチラリと俺に目を向け、足を止めた。


「お前の名前、たとえば前までどんなのがあったの?」

「前までって?」

「俺の前にもいたんだろ、主人。そいつらにはどんな名前つけられてたんだ?」

「…たしかに、ご主人様は色々いたね」


前までの主人たちは、ほとんどが俺を下僕かペットぐらいにしか扱ってなかった。

叶えたい願いを叶えたらすぐに捨てられて、中には一日で全ての願いを使い切った人もいる。

だから名前なんて、あってないようなもの。


「今は宏光が主人だから、好きに呼んでいいよ」

「………わかった。じゃあとりあえず、ちっさい願い事ひとつしてもいいか?」

「えっ、いいけど…これから大きい願い叶えに行くんでしょ?小さい願いなら構わないけど…もう使うの?」

「うん、でもべつにお前の不思議な力はいらないかな」

「どういうこと?」


宏光は俺の体を掬い上げ両掌に乗せると、その場にちょんとしゃがんだ。

俺の目を見て微笑むその眼差しが、すごく優しくて。



「お前が今までの中で、一番気に入ってる名前教えてくれよ。俺もその名前で、お前を呼ぶ」




ちいさく、胸の奥が疼いた気がした。



ろくな主人が居なかった中で、大好きだった主人の声が脳裏に響く。

思わずポカンとしてしまった俺を、覗き込むように宏光が顔を近付けた。


「……あのね、」

「おう」


情けなく震えてしまう声を必死に隠しながら、宏光の掌を見つめた。



「…………せんが、けんと」

「千賀?」

「うん…」

「そっか。そのご主人はお前をちゃんと人として扱ってくれてたんだな」



宏光はすごい。

名前だけで、そんな事までわかってしまう。


「わかった、千賀な」


にっこり笑った目が、本当に優しくて。

宏光の為なら、たとえ不得意な願いでも頑張ってみようと思えた。

5*S→←3*S



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桐山ななみ(プロフ) - わったーの悪役最高♡♡♡♡♡(*´ω`)キタヤンがマジでどうなるか気になる汗ニカ千も汗すごーく続きが気になります!!無理しなくていいので頑張ってください!! (3月12日 6時) (レス) @page20 id: c060af3ed8 (このIDを非表示/違反報告)
谷森山(プロフ) - キスマイさん» お久しぶりです!色々お話がある中で新たに連載すみません(._.)丁寧に作っていきたいと思ってますので、ぜひ最後までお付き合いくださればと思います!よろしくお願いします(*^^*) (2018年8月10日 4時) (レス) id: 9b9168131d (このIDを非表示/違反報告)
キスマイ(プロフ) - こんばんは。久しぶりに谷森山さんのお話を読めて嬉しいです。千ちゃんと宏光の優しいやりとりに胸がぎゅっとなりました。宏光の願い事がとても気になります。ここからどうニカ千が出会うのか今後も楽しみです。これからも応援しています。 (2018年7月24日 23時) (レス) id: 64045badf0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:谷森山 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2018年6月6日 12時

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