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17*S ページ17

ガヤさんはなるべく街人たちから隠れるように歩いた。

そりゃ、王へ暴言吐いた奴の顔は記憶に新しいだろうから。


王宮の壁沿いを歩きながら、どうやって宏光を助けるかを考えてるみたい。



「ん?そこの、見ない顔だな」


王宮の門番は、ガヤさんを見つけると手にした剣を伸ばした。

ガヤさんは息を飲んで立ち止まる。


「…お前、さっき牢に…」

「っ!」


咄嗟に門番へかけた魔法。

水色の光を浴びた門番は、心地良さそうに夢の世界へ。


「あっぶな。…門番でも、顔とか覚えてるんだね」

「健永、人に魔法使ったけど…大丈夫なの?」

「平気だよ。宏光の願いは、ガヤさんを守れ。だからね」


使う魔法が願いに直結してるなら、人間に魔法を使うのは許されるんだ。


「…そっか。ありがとう」


ガヤさんはちょっとだけ疲れた顔で微笑んだ。

ただえさえ毎日のように神経を使ってるんだ。

今日はたくさん歩いたし、宏光のことも心配だろう。

…はやく、はやくふたりを助けてあげたい。


こういう時、あいつならどうしたかな。



(……ねぇ、ニカ?)









街にいてはいつバレるかわからない。

俺たちはちょっと離れた山まで来て、今夜はそこで野宿することにした。

ガヤさんは見かけによらず狩りに慣れていて、道具を魔法で出す前に、素手で魚を何匹も捕まえていた。


「昔は貧乏でさ。北山と川や山に行って、こっそり狩りをしてたんだ。少しでも腹の足しになるようにってね」


まぁ今も貧乏だけど、と付け足して笑ったガヤさん。

宏光とガヤさんの間には、計り知れない深さの絆がある。


「健永も食べなよ。この時期は身が締まってて美味しいんだよ」

「…うん、いただきます!」


ちいさな焚き火で焼いた魚を食べるのは久しぶりだ。

懐かしさに思わず、顔が綻ぶ。




「…健永の主人って、北山の他にどんな人がいたの?」


焚き火のパチパチ言う音に、紛れてしまいそうな程ちいさな呟き。

ガヤさんの目は真っ赤な火に照らされて、切なく綺麗だ。


「いろんなひとがいたよ」

「…じゃあ、一番居心地の良かった主人は?」

「うーん。……ヤンチャでイタズラ坊主だったよ。ふふっ」

「…そのひとの話は、聞いてもいい?」

「……うん、じゃあ少しだけ」


焚き火に新しい薪を投げながら、懐かしい笑顔を思い浮かべた。



「名前はね、ニカ。子供みたいにくしゃって笑うひとだったよ」


ガヤさんは焚べた薪を枝でつつきながら、俺の声に耳を傾けた。

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桐山ななみ(プロフ) - わったーの悪役最高♡♡♡♡♡(*´ω`)キタヤンがマジでどうなるか気になる汗ニカ千も汗すごーく続きが気になります!!無理しなくていいので頑張ってください!! (3月12日 6時) (レス) @page20 id: c060af3ed8 (このIDを非表示/違反報告)
谷森山(プロフ) - キスマイさん» お久しぶりです!色々お話がある中で新たに連載すみません(._.)丁寧に作っていきたいと思ってますので、ぜひ最後までお付き合いくださればと思います!よろしくお願いします(*^^*) (2018年8月10日 4時) (レス) id: 9b9168131d (このIDを非表示/違反報告)
キスマイ(プロフ) - こんばんは。久しぶりに谷森山さんのお話を読めて嬉しいです。千ちゃんと宏光の優しいやりとりに胸がぎゅっとなりました。宏光の願い事がとても気になります。ここからどうニカ千が出会うのか今後も楽しみです。これからも応援しています。 (2018年7月24日 23時) (レス) id: 64045badf0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:谷森山 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2018年6月6日 12時

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