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8*M ページ8

「ぐぅ…」


あの後玉が気になって、仕事が手に着かなくて。

結局俺は今日も暗いデスクにひとりだけ、ぽつんと残されてしまった。

俺の机に置ききれなかった資料は、ガヤさんのデスクにまではみ出して積んである。

…ちゃんと仕事モードに切り替えて定時に終われていたら、今頃玉の待つ家に帰れたのに。

自分の要領の悪さに激おこだよ!(泣)




“みゃた、もしもし…みゃーた…”




今朝方の、涙目で見上げてくるかわいい顔が脳裏に浮かぶ。

一秒でもはやく、帰りたくて。

自分でも信じられないほどマッハで仕事を消化していった。


(…でも、なんで“もしもし”なんだろうか…)


印刷を終えた資料をまとめると、ふとそんな疑問が過ぎる。

俺が都合よく解釈した“もしもし”は、“はじめまして”とか“よろしく”とか、そういう系だったから。

あんな涙目で訴える“もしもし”は、どういう意味なんだろうか。


(聞きたくても、言葉理解してもらえないからなぁ…)


でも、言葉の理解がなくてもかわいい。

傍に置いておきたいと思ったのは、嘘でもなんでもない。


日付が変わる寸前の夜道を、猛スピードで自転車を漕いだ。

ちゃんと家に居てくれてるだろうか。

俺を捜しに、外へ出て迷子になっていないだろうか。

悪い奴らに、襲われたりしていないだろうか。


不安はどんどん募る。

そんな時に限って、踏切や信号に引っかかる。


イライラしながらも、ようやく自宅へ辿り着いた。





「玉、ただい…」




待っていてほしいと願いながら開けた玄関。

俺の視界に映ったのは、真っ暗闇。

背筋を流れた汗は、自転車を全力で漕いできた為のものか、それとも…




「…たま?」



恐る恐る名前を呼んでみると、足元でごそっと音がした。

慌てて靴を脱いで電気を点けると、俺は思わず息を飲んだ。



「…っ、…ぅ…うぅ…っ」

「た、たまっ!?」


朝俺が出て行った時と、まったく同じ場所で。

玉は床に力無く転がっていた。

そしてなぜか、塞がってきたと思っていた傷から血が溢れ、床に赤い水溜まりが出来ていた。


「たま、たまっ!」

「ぅ…み、ゃ…」

「玉どうした!?もしかして、朝からずっとここに居たの!?」


玉は苦しそうにまばたきをしながら俺を見上げると、ふにゃりと微笑んで俺の服を握った。

なんだかそれがすごく泣きそうになってしまって、抱き上げて手当てを急いだ。

止血の間ずっと、玉は俺の服を握って放さなかった。

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- 初めまして。ひっそりファンで何度も作品を読み返している者です。すぐ引き込まれて読むのがいつも楽しいです。題材材料となる専門的知識がすごいですね。しっかり勉強熟読して作品にされてるからファンタジーでも抵抗無く読めるのだと思います。更新嬉しかったです。 (2020年12月7日 14時) (レス) id: 86cd2f1e13 (このIDを非表示/違反報告)
nanaco(プロフ) - こんばんは(TT) おまけのお話、すごく大切に読ませて頂きました……図々しくもSNSで作品名を出させて頂いた者です(;ω;) 作品の世界にどっぷりとハマり数日間余韻が抜けなくて^^; がじゃいも…の台詞のところで涙腺やられました(TT) 本当に大好きな作品です… (2020年12月6日 0時) (レス) id: a7b3edb10a (このIDを非表示/違反報告)
りんご(プロフ) - シンプルにすばらしいです…なきました (2019年8月28日 17時) (レス) id: f95f9b47d8 (このIDを非表示/違反報告)
なぁ(プロフ) - はじめまして。読み始めたら止まらなくて一気に読んでしまいました。まっしろたまちゃんかわいいし可哀想だし読みながら号泣してしまいました…!素敵なお話ありがとうございました!谷森山さんの他のお話も読ませていただこうと思います (2017年6月20日 1時) (レス) id: 6204cccf27 (このIDを非表示/違反報告)
谷森山(プロフ) - ひよさん» はじめまして。お返事遅れまして申し訳ありません!最後までお付き合いくださりありがとうございました!ご満足いただける作品になっているようで安心いたしました!たまちゃんは永遠の天使です(ドヤァ)他作品でも、またよろしくお願いしますね(*^^*) (2017年6月6日 18時) (レス) id: 9b9168131d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:谷森山 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2016年6月15日 4時

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