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43*M ページ43

「…そん、な……」


声になったかわからない、俺の呟き。

天使たちは涙しながら、玉に祈りを捧げているようだ。





「うぁああぁぁっ!!」

「北山!」


俺の後ろで、きたみつが暴れる音がする。

きっとガヤさんは、痛む体で必死にそれを抑えているんだろう。

…だけど、ガヤさんも暴れたいほど悲しいはず。

ニカと千ちゃんも、地面に這いつくばるように泣き喚いていた。

横尾さんは呆然と、ただ真っ白になった玉を眺めて、するすると涙を流す。





…俺は……






「……たま、」




不思議と、涙は出て来なくて。


さっきまであんなに溢れ出てきたせいか、もう泣くのは飽きたらしい。



真っ白になった玉の頬を撫でてみると、もう硬い。

柔らかいお餅みたいな、あのほっぺたはもう触れないのか。


「…っ、」


ならばせめて、と。

真っ白な唇に、自分の唇を押し付けた。


やっぱり硬い、けど…少しだけ、暖かくて。




もう飽きたんじゃないのか、どうやら俺は涙もろいらしい。



「…ふ、うぅっ…」



止まらない涙。

愛しくて、切なくて、くやしくて。


またこの唇から、かわいらしい声が聞こえてこないだろうか。

そんな期待もあって、唇を見つめてみた。



ーあぁ、なんだか少し微笑んで見える。


神様は、やさしくて…いじわるだね。









すぐそこまで迫っていた黒い塊は、竜巻のような風とともに姿を消した。

飲み込まれた大地は元に戻ったけど、堕天人や天使たちが戻ってくることはなかった。


天使たちは玉の像を大切に大切に抱えて、天使の教会へ運んでいく。


俺が玉を匿っていたと知ると、みんな泣きながら俺に頭を下げてきた。

…そんなの、もうどうだっていい。

過ぎたこと、玉が帰ってくるわけじゃないんだから。



俺の心には、想像以上に大きな穴が空いてしまった。




玉が居たことで意味のあった世界は今、俺にとってなんの意味も無い。


「…宮田、変なこと考えんなよ」


ガヤさんが涙目になりながらも、俺の肩を叩いてくれた。

…大丈夫、俺ビビりだし。

心配してくれてるようなことにはならないよ。



って、言いたかったけど。



言葉は口からガヤさんへ届くことを嫌って、俺の心にとどまった。

なにも言わない俺に、ガヤさんは少し眉根を寄せたけど、それ以上はなにも言わなかった。

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- 初めまして。ひっそりファンで何度も作品を読み返している者です。すぐ引き込まれて読むのがいつも楽しいです。題材材料となる専門的知識がすごいですね。しっかり勉強熟読して作品にされてるからファンタジーでも抵抗無く読めるのだと思います。更新嬉しかったです。 (2020年12月7日 14時) (レス) id: 86cd2f1e13 (このIDを非表示/違反報告)
nanaco(プロフ) - こんばんは(TT) おまけのお話、すごく大切に読ませて頂きました……図々しくもSNSで作品名を出させて頂いた者です(;ω;) 作品の世界にどっぷりとハマり数日間余韻が抜けなくて^^; がじゃいも…の台詞のところで涙腺やられました(TT) 本当に大好きな作品です… (2020年12月6日 0時) (レス) id: a7b3edb10a (このIDを非表示/違反報告)
りんご(プロフ) - シンプルにすばらしいです…なきました (2019年8月28日 17時) (レス) id: f95f9b47d8 (このIDを非表示/違反報告)
なぁ(プロフ) - はじめまして。読み始めたら止まらなくて一気に読んでしまいました。まっしろたまちゃんかわいいし可哀想だし読みながら号泣してしまいました…!素敵なお話ありがとうございました!谷森山さんの他のお話も読ませていただこうと思います (2017年6月20日 1時) (レス) id: 6204cccf27 (このIDを非表示/違反報告)
谷森山(プロフ) - ひよさん» はじめまして。お返事遅れまして申し訳ありません!最後までお付き合いくださりありがとうございました!ご満足いただける作品になっているようで安心いたしました!たまちゃんは永遠の天使です(ドヤァ)他作品でも、またよろしくお願いしますね(*^^*) (2017年6月6日 18時) (レス) id: 9b9168131d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:谷森山 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2016年6月15日 4時

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