37*Y ページ37
周りの木々、茂みも花も地面も、すべて赤黒い塊が飲み込んでいく。
飲み込むたびにそれは拡大して、翼のちいさいニカと健永を、間一髪抱えて飛び立つことができた。
「…っぶねぇ、」
「わった−、ありがとう…」
「くっ…お、重い…」
ゴトゴトと音を立てて広がる塊。
それは長老の取り巻きたちも飲み込み、長老まで飲み込もうとする。
「長生きしたナ。どうだ?命が終わル気分は」
「…わしは構わんよ。世界はもともと、若い力で造っていくもんだ。…でも、お前も飲み込まれるだろう?」
「構わん。天使と堕天人、すべてヲ一度無にすること…それが目的だかラな」
「そうかい…まったく、まいったねぇ…」
ふたりが飲まれていく時、長老はふと俺たちを見上げた。
そしていつもと同じやさしい笑みで、
「横尾くん。これを収めるには…この血を止めるしかない。つらい選択になるが……」
できれば聞きたくないんだけど、両手はニカと健永を抱えてていっぱいいっぱいだ。
長老はたぶん、それに気付いてる。
だけど少しだけ眉根を寄せて、苦しそうに微笑んだ。
「…玉を、“永遠の白”として固めることだ」
その笑顔は、瞬く間に赤黒いものに覆われ、見えなくなった。
大きな堕天人は、両手を広げて天を仰ぐ。
「ははハはは!!澄んだ空よ、待ってイろ!私は、すぐに戻ってクるからなぁ!!!」
高笑いの声は、塊が飲み込んでからしばらく消えることはなかった。
ふたりを飲んでも、尚広がり続ける塊。
ニカと健永は泣きそうな顔で、俺を見つめてきた。
「うぅ…長老が…っ」
「わった−、どうすんの?…た、たまを…せっかく助けたのに…っ、ころ」
「だまれ!!」
ニカが言わんとしていることは、あまりにも直接的すぎる。
耳をふさいで立ち去りたいけど、それはたとえ両手が自由でも…ゆるされない使命だろう。
「とりあえず、このままじゃみつたちも危ない。急いで戻ろう」
幸い、塊が広がり進む速度はさほど速くない。
離れたところまで飛んで、ふたりを地面に下ろす。
ふたりは全力で駆けだした。
その道には、点々と涙の跡が染みこんでいた。
(血、の持ち主…玉が生きている間は、この暴走は収まらないってこと?)
堕天人には、地に穴を開ける力があると聞いた。
実際みつはそれで人間界に落とされたらしいし。
きっとその力が、玉の血と混ざる事によって今回の暴走を生んだんだ。
このままじゃ天界も、人間界も危ない…!
619人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「Kis-My-Ft2」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
愛 - 初めまして。ひっそりファンで何度も作品を読み返している者です。すぐ引き込まれて読むのがいつも楽しいです。題材材料となる専門的知識がすごいですね。しっかり勉強熟読して作品にされてるからファンタジーでも抵抗無く読めるのだと思います。更新嬉しかったです。 (2020年12月7日 14時) (レス) id: 86cd2f1e13 (このIDを非表示/違反報告)
nanaco(プロフ) - こんばんは(TT) おまけのお話、すごく大切に読ませて頂きました……図々しくもSNSで作品名を出させて頂いた者です(;ω;) 作品の世界にどっぷりとハマり数日間余韻が抜けなくて^^; がじゃいも…の台詞のところで涙腺やられました(TT) 本当に大好きな作品です… (2020年12月6日 0時) (レス) id: a7b3edb10a (このIDを非表示/違反報告)
りんご(プロフ) - シンプルにすばらしいです…なきました (2019年8月28日 17時) (レス) id: f95f9b47d8 (このIDを非表示/違反報告)
なぁ(プロフ) - はじめまして。読み始めたら止まらなくて一気に読んでしまいました。まっしろたまちゃんかわいいし可哀想だし読みながら号泣してしまいました…!素敵なお話ありがとうございました!谷森山さんの他のお話も読ませていただこうと思います (2017年6月20日 1時) (レス) id: 6204cccf27 (このIDを非表示/違反報告)
谷森山(プロフ) - ひよさん» はじめまして。お返事遅れまして申し訳ありません!最後までお付き合いくださりありがとうございました!ご満足いただける作品になっているようで安心いたしました!たまちゃんは永遠の天使です(ドヤァ)他作品でも、またよろしくお願いしますね(*^^*) (2017年6月6日 18時) (レス) id: 9b9168131d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ