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35*Ki ページ35

「うおっ!?」


藤ヶ谷を抱きしめながら、茂みに隠れてしばらく。

すごく大きな堕天人が、ドシドシと歩いてきた。

慌てて体を丸めて息を潜め、藤ヶ谷をぎゅっと抱きしめた。


「ふふ…これデ……ふふふははハ…」


堕天人の手は、きっと奴のものではない血で染まっている。

それを見つめながら、なにやら高笑いをして…俺たちに気付くことなく去っていった。


(…なに企んでやがる?)


ひとりなら確実に追っていたけど、今の俺は勝手な行動が許されない。

藤ヶ谷の髪を撫でて堕天人の背を目で追うと、見えなくなった頃にパタパタと足音が聞こえてきた。


「きたみつっ!」

「…ったま!!」


横尾さんが抱えてきたのは、ぐったりと目を閉じた玉。

思わず目をそらしたくなるほど痛々しいその姿。

でもちゃんと息はしてて、安心した気持ちが勝った俺の肺から、口を辿って大きく息が吐き出された。


「…よかった…、よかっ……!」

「宏光、泣かないで」


千賀がやさしく髪を撫でてくれて、はじめて自分が泣いていると気付いた。

ニカと横尾さんは顔を見合わせると、ふと俺に目を向ける。


「…みつ、まだ安心できないかもしれない」

「えっ?」

「さっき堕天人のボスみたいな奴が、玉の血を掬ってどこかへ行ったんだ」


その言葉に、先ほど目の前を通ったあいつが脳裏をよぎる。


「あ…俺も、見た!」

「ほんと?」

「うん…なんか、すげぇ笑ってたけど」

「やっぱり何かする気だよ!」


興奮気味のニカを落ち着かせるように、横尾さんはそっと玉を下ろした。


「みつ、どっち行ったかわかる?そいつ」

「え、あ…あっち…」

「追っかけるぞ、ニカ!」

「ま、まって…!」


今にも走り出しそうなふたりに、宮田が叫ぶ。

宮田は玉の髪を撫でながら、不安そうにふたりを見上げた。


「これ以上、玉に危ないことさせたくないよ。…追わずに、身を隠したらだめなの?」


その言葉に、全員の視線が玉に、それから藤ヶ谷へ移った。

なんとなく俺に意見を求められてる気がして、静かに口を割った。


「…俺も、とりあえず藤ヶ谷には安全なところにいて欲しいかな」


ニカは一瞬下を見ると、勢いよく顔を上げた。


「わかった!宮田とみつはふたりを安全なところに隠してよ。俺は…なんとしてでもあいつの思惑通りになんかさせたくない!」

「俺もいく!」

「ちょ、待て!」


横尾さんの制止も虚しく、走りだしたニカの後を追った千賀も、振り返ることはなかった。

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- 初めまして。ひっそりファンで何度も作品を読み返している者です。すぐ引き込まれて読むのがいつも楽しいです。題材材料となる専門的知識がすごいですね。しっかり勉強熟読して作品にされてるからファンタジーでも抵抗無く読めるのだと思います。更新嬉しかったです。 (2020年12月7日 14時) (レス) id: 86cd2f1e13 (このIDを非表示/違反報告)
nanaco(プロフ) - こんばんは(TT) おまけのお話、すごく大切に読ませて頂きました……図々しくもSNSで作品名を出させて頂いた者です(;ω;) 作品の世界にどっぷりとハマり数日間余韻が抜けなくて^^; がじゃいも…の台詞のところで涙腺やられました(TT) 本当に大好きな作品です… (2020年12月6日 0時) (レス) id: a7b3edb10a (このIDを非表示/違反報告)
りんご(プロフ) - シンプルにすばらしいです…なきました (2019年8月28日 17時) (レス) id: f95f9b47d8 (このIDを非表示/違反報告)
なぁ(プロフ) - はじめまして。読み始めたら止まらなくて一気に読んでしまいました。まっしろたまちゃんかわいいし可哀想だし読みながら号泣してしまいました…!素敵なお話ありがとうございました!谷森山さんの他のお話も読ませていただこうと思います (2017年6月20日 1時) (レス) id: 6204cccf27 (このIDを非表示/違反報告)
谷森山(プロフ) - ひよさん» はじめまして。お返事遅れまして申し訳ありません!最後までお付き合いくださりありがとうございました!ご満足いただける作品になっているようで安心いたしました!たまちゃんは永遠の天使です(ドヤァ)他作品でも、またよろしくお願いしますね(*^^*) (2017年6月6日 18時) (レス) id: 9b9168131d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:谷森山 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2016年6月15日 4時

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